さて、そもそもこの電動キックボードだが、その存在意義がどこにあるかと言えば、動力付きで最も簡易な車両として、従来のボトムエンドを受け持つことにある。最寄駅からのラストワンマイルを快適に移動するツールは従来の交通システムに欠落していたものであり、そこを補完する新たなモビリティとして期待されている。
ボトムエンドなので、制度設計としては可能な限り敷居を低くしたいわけだが、一方で蔑ろにするわけにはいかない安全への配慮がある。事故を起こせば人命にかかわる。その敷居の低さと安全性の対立関係のバランスが一番難しい。
われわれは既にどういう規制になったかを知っているが、議論の過程としては、主に以下の対立ポイントがあったと想像される。
(1)要免許かどうか
(2)速度上限規制
(3)車両の構造規制(主に前輪サイズとブレーキ)
(4)歩道走行の可否
(5)自賠責保険の義務付け
(1)は回避され、年齢制限付きで免許が不要になった。(2)は時速20キロに決まった。原付一種より速い規制速度はあり得ないので、その範囲において最も高い速度が選ばれたと言っても良いと思う。(3)は(2)との兼ね合いが大きい。低速であるほど構造は単純で済むが、速度が上がれば構造的にもより安全性が求められる。
(4)は例外的な速度モードを装備することによって可能になった。(5)はそのまま義務付けで、これは交通弱者の救済を考えれば当然だろう。
ということで一体この落とし所をどう見るかだが、ボトムエンドの動力付きモビリティの存在意義は当然あると思う。それが大前提の上で、要免許であれば既存の原付一種で良いので、それ以下であることを前提にすれば免許はないほうが望ましい。ただし、免許を不要にして交通ルールをどう教育するか。そして違反があったときの処罰方法など課題はいろいろ考えられる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング