マーケティング・シンカ論

「旅行の代わり」にあらず ホテルのサブスクがコロナ後も新規客を獲得できるワケグッドパッチとUXの話をしようか(1/4 ページ)

» 2023年07月13日 08時00分 公開

連載:グッドパッチとUXの話をしようか

「あの商品はどうして人気?」「あのブームはなぜ起きた?」その裏側にはユーザーの心を掴む仕掛けがある──。この連載では、アプリやサービスのユーザー体験(UX)を考える専門家、グッドパッチのUXデザイナーが今話題のサービスやプロダクトをUXの視点で解説。マーケティングにも生きる、UXの心得をお届けします。

 昨今、NetflixやSpotifyなどさまざまなサブスクリプション型のサービスが世の中にあふれていますが、皆さんは「ホテルのサブスク」と聞いてピンと来るでしょうか。

 「え、定額でホテルに泊まり放題?」と驚く方もいるかもしれませんが、最近では、東急が「Tsugi Tsugi」と呼ばれる定額制の回遊型住み替えサービスを事業化するなど、市場の伸びが期待される分野です。

市場の伸びが期待される「ホテルのサブスク」(画像:ゲッティイメージズより)

 ホテルのサブスクが注目された背景には「新型コロナウイルスでの旅行需要の落ち込み」があります。落ち込んだ需要を回復させたかったホテル側の事情と「旅行ができなくとも、自宅や近所で贅沢(ぜいたく)したい」という生活者のニーズがかみ合ったわけです。私自身も、せめて旅行の気分だけでもと「HafH(ハフ)」というサービスに登録しました。

 さて、時は流れて今は旅行の制限もなくなりましたが、HafHの会員数は伸び続けており、4万人に達する勢いです。

HafH経由で宿泊できるホテル ※画像のホテルは「オリエンタルホテル 沖縄リゾート&スパ」(画像:KabuK Styleプレスリリースより)

 もちろん、旅行を目的にこうしたサブスクに登録する方もいると思いますが、サービスの特性を考えると、そうではなく「気軽にホテルに泊まれる」ことを魅力に感じている方が多いのでしょう。HafHの公式Webサイトにある利用者の声を見ても、旅行ではなく、普段使いのような形で近場のホテルに泊まるケースが多いことが分かります。

 こう見ると、ホテルのサブスクは「ホテルの新たな使い方を生み出した」とも言えそうですが、人気の秘けつはどこにあるのでしょうか。この記事では「ユーザー体験(UX)」の観点からその理由を考察していきます。

蜜月関係にある「ホカンス」と「サブスク」

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