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「伝えたいこと」を伝えれば、本当に「伝わる」のか伝えたいこと(3/5 ページ)

» 2023年07月31日 08時00分 公開
[松永光弘ITmedia]
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 しかし、実際の伝えるコミュニケーションは、こんなふうに行われてはいません。

 登場人物がふたりというのは同じです。

 ひとりが「伝え手」で、もうひとりが「受け手」というのも変わらない。

 ただ、働きかけのプロセスが少し違っています。

 「伝え手」が「受け手」に“直接”働きかけることはまずありません。

 「伝え手」はかならず「伝える事柄」をいったん表現します。

 そして「受け手」が、そこにかかわり(見たり、聞いたり、読んだりする)、そのうえで納得したり、共感したりしたときに「伝わった」となる(図参照。「受け手」が複数の場合は、このコミュニケーションが個別に複数箇所で起こる)。

 これが伝えるコミュニケーションの本当の姿です。

 図を参照しながら表現物の話をしたうえであれば、そこまで違和感はないかもしれませんが、講演などでぼくがいきなりこの構図の話をすると、「いったん表現する」という部分に戸惑う人もいます。

 いや、自分はそんなたいそうなことはしていない、と。

 でも、冷静に考えると分かるように、人から人へ、なにかを“直接”伝達することはできません。そんなことができるのは、テレパシーが存在するSFの世界だけです。

 現実の人と人とのコミュニケーションは、必ずなにかを媒介して行われます。

 文字によるコミュニケーションなら、紙やデジタルデバイス上などに表示された言葉や文章。話すコミュニケーションなら、声として発した言葉や話がその役割をにないます。

 映像にしても、デザインにしてもそうでしょう。あるいは事業などにもあてはまることかもしれません。

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