しかし、実際の伝えるコミュニケーションは、こんなふうに行われてはいません。
登場人物がふたりというのは同じです。
ひとりが「伝え手」で、もうひとりが「受け手」というのも変わらない。
ただ、働きかけのプロセスが少し違っています。
「伝え手」が「受け手」に“直接”働きかけることはまずありません。
「伝え手」はかならず「伝える事柄」をいったん表現します。
そして「受け手」が、そこにかかわり(見たり、聞いたり、読んだりする)、そのうえで納得したり、共感したりしたときに「伝わった」となる(図参照。「受け手」が複数の場合は、このコミュニケーションが個別に複数箇所で起こる)。
これが伝えるコミュニケーションの本当の姿です。
図を参照しながら表現物の話をしたうえであれば、そこまで違和感はないかもしれませんが、講演などでぼくがいきなりこの構図の話をすると、「いったん表現する」という部分に戸惑う人もいます。
いや、自分はそんなたいそうなことはしていない、と。
でも、冷静に考えると分かるように、人から人へ、なにかを“直接”伝達することはできません。そんなことができるのは、テレパシーが存在するSFの世界だけです。
現実の人と人とのコミュニケーションは、必ずなにかを媒介して行われます。
文字によるコミュニケーションなら、紙やデジタルデバイス上などに表示された言葉や文章。話すコミュニケーションなら、声として発した言葉や話がその役割をにないます。
映像にしても、デザインにしてもそうでしょう。あるいは事業などにもあてはまることかもしれません。
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