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「伝えたいこと」を伝えれば、本当に「伝わる」のか伝えたいこと(1/5 ページ)

» 2023年07月31日 08時00分 公開
[松永光弘ITmedia]
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「伝えたいこと」を伝えれば、本当に「伝わる」のか

「伝え方――伝えたいことを、伝えてはいけない。』(松永光弘/クロスメディア・パブリッシング)

 ここまで3回の記事でお話ししてきたことをまとめると、はっきりと分かっているから、はっきりと伝えることができる。

 だから、「伝えるべきこと」をあらかじめ自覚することが大切。

 こう聞いて、「そうか。じゃあ、まずは“伝えたいこと”をとにかく研ぎ澄まそう」と思ってくださった方。

 ひとまず、方向性はそういうことです。

 でも、その先──ただ理解してもらうだけでなく、相手に納得してもらったり、賛同してもらったり、共感してもらったりしたいのであれば、実はもう少し考えなくてはいけないことがあります。

 それは、「伝えたいこと」を伝えれば、本当にそれで「伝わる」のか、ということ。

 世間では「自分が伝えたいことを伝えるべきだ」とよくいわれます。

 でも、本当にそれでいいのか。それで通用するのか……。

 結論からいうと、残念ながら、そういつもうまくことが運ぶわけではありません。

 実際のコミュニケーションでは、「伝えたいこと」を伝えても相手に伝わらないことが少なくありません。

 一番分かりやすい例のひとつは説教でしょう。

 例えば、親が子どもに「勉強しないと、ろくな大人になれない」と伝えたいとする。もしくは「自分は勉強しなかったことを後悔している」と伝えたい。

 そのまま伝えたところで、子どもが納得したり、共感したりすることはまずありません。

 「伝えたいこと」を伝えても、伝わらない。

 なぜでしょうか。

 最大の原因は、実は伝えるコミュニケーションの構造そのものにあります。

 そもそも、伝え手の「伝えたいこと」が、受け手にすんなりとは受け入れられづらい構造のなかで、私たちはコミュニケーションをしているのです。

 もっといえば、「伝えたいこと」をそのまま伝えても、納得してもらったり、共感してもらったりするどころか、受け手との間に「コミュニケーションの橋」が架からない可能性すらあります。

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