BEVが次世代車の“本流”にならない4つの理由 トヨタ「全方位戦略」で考える(6/6 ページ)

» 2023年07月31日 17時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]
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切り札は「全固体電池」 充電10分で1200キロ走行?

 一方で後れを取っているBEVについても、2026年までに年間生産台数を150万台にするとし、環境整備が遅れている国内よりも米国向けなどを先行して、市場シェア拡大をはかっていく方針を示しています。最新の情報では、10分の充電で1200キロ走行できる全固体電池EV車を27年に市場投入すると発表しており、まさに全方位の姿勢で脱炭素の次世代自動車開発に突き進んでいるわけなのです。

photo 全固体電池(出典:トヨタ公式Webサイト)

トヨタの攻勢 政府も巨額補助金で後押し

 国もトヨタの姿勢を、全面的に後押しする姿勢を見せています。1つは経済産業省がトヨタの電池投資に、1178億円の補助金拠出を決めたことです。水素エネルギーの活用に関しても、政府が次世代の脱炭素燃料としての水素のサプライチェーン整備に向け、この先15年間で15兆円の投資支援に乗り出す、という報道(日本経済新聞6月3日付け記事)もありました。わが国の産業界の心臓部ともいえる自動車業界に対して、言い換えればその中心で全方位での前進姿勢を示すトヨタに対して、何か大きな力が動き始めたと感じています。

photo 経済産業省

 脱炭素の次世代自動車レースにおいて、現状、日本が劣勢に立たされているのは動かしがたい事実です。しかし「BEVは脱炭素車のデファクト・スタンダードならず」と多角的に次世代脱炭素自動車開発にまい進するトヨタが、ゲームチェンジャーとなる可能性も大いに感じられはしないでしょうか。100年に一度の大変革を迎える自動車業界にどのような未来が待ち受けているのか、まだまだその全貌は見えていないのです。

著者プロフィール・大関暁夫(おおぜきあけお)

株式会社スタジオ02 代表取締役

横浜銀行に入り現場および現場指導の他、新聞記者経験もある異色の銀行マンとして活躍。全銀協出向時はいわゆるMOF担として、現メガバンクトップなどと行動を共にして政官界との調整役を務めた。銀行では企画、営業企画部門を歴任し、06年支店長職をひと区切りとして円満退社した。その後は上場ベンチャー企業役員などとして活躍。現在は金融機関、上場企業、ベンチャー企業のアドバイザリーをする傍ら、出身の有名超進学校人脈や銀行時代の官民有力人脈を駆使した情報通企業アナリストとして、メディア執筆者やコメンテーターを務めている。


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