トヨタが全面BEV化を否定する2つ目の理由は、各国の電力事情にあります。発電源構成比をみると、現時点で日本の8割、中国の7割、米国の6割は化石燃料が占めています。欧州では、水力と原子力で約9割を占めているスイスを筆頭に、太陽光、風力、水力などの再生可能エネルギーと原子力による脱炭素電源化が比較的進んでいますが、他地域ではいまだにCO2(二酸化炭素)を排出する化石燃料燃焼型電源が圧倒的に多いのです。
自動車をいくらBEVで脱炭素化しても、それを動かすための発電段階でのCO2削減に限界があるのなら、他の脱炭素化自動車も検討するのが筋であるというのが、トヨタ全方位戦略の裏にある主張でもあるわけです。
特に日本は東日本大震災以降の原子力発電量激減により、他国以上に化石燃料に頼らざるを得ない特殊な事情もあります。トヨタがわが国の産業界をリードする立場であればこそ、BEV以外の脱炭素カーの開発に注力し続けているのだともいえるでしょう。
昨夏は、電力需給がひっ迫し、東京電力管内に節電要請が出ました。ウクライナ戦争などで原油価格が高騰する中、今夏も同様の状況が想定されます。現状、BEV自体からCO2は出ませんが、その動力源を発電するたびにCO2が排出される状況です。ウクライナ情勢が不透明な上、化石燃料に依存する状況でBEV普及を進めれば、電力需給が一層ひっ迫する可能性もあるのです。
最近は電気代も高騰しており、BEVには不利な状況が続いているように思えますが、経済産業省はBEVユーザーに、夜間に蓄電し、日中に使用するといった使い方を提唱しています。
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