大手百貨店の新宿・日本橋など基幹店6店舗における2022年度の売り上げが、コロナ前の19年度を上回った、と6月末の日経新聞が報じていた。これは各店舗の売り上げを売り場面積で割った1平方メートル当たりで比較(売場増床などの影響を除くため)したものだというが、伊勢丹新宿本店、高島屋日本橋店、阪急本店(大阪市)、松屋銀座店、高島屋横浜店、三越日本橋本店と6店舗がコロナ前超えとなったという。
要因としては大都市に人流が戻ったことに加えて、富裕層の消費拡大により、時計、宝飾品、絵画などの高額品が伸びたことが挙げられる。大都市部の百貨店は、22年度でかなり復活しているようだ。
では、コロナが5類に移行した5月はどうだったのか。百貨店協会の都市別統計でみると、百貨店全体でも大都市ではかなりのところまで復調していることが分かる。コロナ前の19年5月と23年5月の売り上げを比較をすると、大都市ではほぼコロナ前の水準(98%程度)に戻っており、特に高額品が含まれる身の回り品が2割増しの実績でけん引している。
しかし、地方をみると全体で8割、身の回り品も約87%とコロナ前の水準はまだ遠く、コロナ禍を経て大都市と地方の百貨店はさらに2極化が進んだように思われる。富裕層に加えて、インバウンド需要も戻りつつある大都市の百貨店は今後さらに売り上げを伸ばしていく余地があるが、地方百貨店にとってまだまだ厳しい環境が続くようだ(図表1)。
そんななか、島根県松江市の一畑百貨店が来年1月をもって閉店することを発表。「また1つ百貨店のない県が増えた」と話題になった。百貨店がない県は山形県、徳島県に続き、島根県で3県目だが、地方百貨店の経営環境が厳しいとされる中で、一部では次に百貨店がなくなるのはどこかといった報道もされていた。
ではなぜ地方百貨店がなくなるのか、ということについて一般的には、(1)人口減少による地方の市場縮小、(2)ECへのシフト、(3)郊外型大型ショッピングモールの進出、とされることが多い。今回は、これらの要素が実際どのくらい影響したのかについて、一畑百貨店と島根県のデータを用いて少し考えてみることにした。
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