今回の開発テーマは「人間×AI」であり、全てをAIが担ったわけではない。AIはあくまで開発ツールであり、最終的な調整やブラッシュアップはこれまでと同様に人間が行った。
「N-Wing★の活用で、開発の幅が広がったと感じています。実は、しょっぱさを増した男梅サワーは過去にも検討していたのですが、なかなか苦戦していました。今回はAIの違う角度からの提案で、ブレイクスルーできました。
『しょっぱくしたいから塩を入れよう』『酸っぱくしたいから酸味の強い原料をたくさん足そう』ではなくて、全然違うアプローチができるのだと分かりました。原料はそんなに足していないのに、すごく酸っぱく感じさせられるという可能性が見えたので、今後もいろいろ試していきたいですね」(岩佐さん)
作業時間も大幅に削減した。同社はN-Wing★の導入によって、従来と比較して商品開発にかかる総時間が約50%削減される効果を見込んでいた。永安さんは「体感になってしまいますが、手数はかなり少なく済み、50%削減といってもいいくらい作業時間は短縮されました」と振り返る。
とはいえ、課題も残る。AIは機械的にオーダーに沿った原料の配合を提案できるが、ブランドとしての方針やコンセプトを考慮した調整はまだできない。
「確かにしょっぱさは増すけれど、男梅サワーとしての味わいが大幅に変わってしまうじゃん――ということも。自由度が高いことが魅力ですが、自由すぎても人間やブランドが使いこなせないと思います。今後インプットを重ね、より多くのレシピを学習させることができれば、より有用なシステムになると考えています」(岩佐さん)
同社は現在、RTDを中心に他の商品でもN-Wing★の活用を進めている。AIを導入することで、よりクリエイティビティの高い仕事やイノベーションに人間が注力できる環境を整えていく。
「開発以外でもAIに担ってもらえる部分は随時検討しています。人間にしかできないこととAIに任せられることを見分け、協業を進めていきたいです。
人間にしかできないことはまだまだたくさんあります。新しい技術の種を生み出したり、素材の開発をしたり――人間にしか生み出せない知見をAIにインプットすることで、お互いを高め合っていきたいです」(永安さん)
「商品の企画担当としては、N-Wing★の活用で作業に追われていた時間、中身確定にかかる時間が短縮されました。工数が減った分、もっと多くの新しい企画を提案していきたいです」(岩佐さん)
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