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「ほぼ日手帳」ヒット支えた“糸井重里流”チーム作り “リコール”の危機を販促につなげた独自手法苦難の連続(1/2 ページ)

» 2023年09月30日 08時30分 公開
[河嶌太郎ITmedia]

 ロールプレイングゲーム「MOTHER」シリーズの生みの親として知られる、コピーライターの糸井重里さん。糸井さんが代表取締役社長を務める株式会社ほぼ日(東京都千代田区)による「ほぼ日手帳」が今、年間82万部を売り上げ、累計販売部数は1000万部を超えている。

朝ドラ「らんまん」のモデルになった牧野富太郎博士の植物図をあしらったほぼ日手帳

 「ほぼ日手帳」の発売は2001年10月と、手帳業界でも後発の部類だ。しかし「1日1ページ」という作りや独自の手帳カバーなど、他の手帳と一線を画す機能により、またたく間に業界内のニッチな需要を獲得した。その独自性からか、手帳機能がデジタルへの移行が進む最近でも、前年比30 .3%増という過去最高収益を出し続けている(23年8月期 第3四半期 決算説明資料より)。海外では特に北中米で67.5%増、欧州で104.5%増と、人気が高まっているという。

 だが、その誕生の背景にはさまざまな苦難があった。まず、それまで通販しかしてこなかったほぼ日にとって、いかに一般流通に乗せるかも課題だった。他にも販売初年から不良があるとの指摘から手帳を手作業で再出荷したり、工場が火災に遭ったりするなどの憂き目にも遭ったという。

 そんな「ほぼ日手帳」がなぜ、累計販売1000万部という売り上げを挙げ、独自の地位を確立できたのか。第1回【糸井重里に聞く「ほぼ日手帳」売上30%増のワケ デジタル時代なのになぜ?】に引き続き、ほぼ日代表取締役社長の糸井重里さんと、取締役の小泉絢子さんに聞いた。

糸井重里(いとい・しげさと)株式会社ほぼ日 代表取締役社長。1948年生まれ、群馬県出身。コピーライターとして一世を風靡し、作詞や文筆、ゲーム制作などでも活躍。98年に毎日更新のWebサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」創刊。『ほぼ日手帳』をはじめ、AR地球儀『ほぼ日のアースボール』、「人に会おう、話を聞こう。」をテーマにアプリ・Webでお届けする『ほぼ日の學校』など多様なコンテンツの企画開発を手掛ける(以下、糸井社長と小泉取締役の撮影は斉藤順子)
小泉絢子(こいずみ・あやこ)株式会社ほぼ日 取締役。学生時代からアルバイトでほぼ日に勤務した後、2001年4月に入社。01年に発売したほぼ日のロングセラー商品「ほぼ日手帳」を、立ち上げから担当する。08年11月に事業支援部長に就任した後、12年12月に商品事業部長に就任。13年6月に取締役に就任

「ほぼ日手帳」の売り上げを拡大させた“秘策”とは?

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