「部下の顔色」が気になり仕事を振れない……悪循環を解消する2つのヒントQA「売れない営業」から脱出(2/2 ページ)

» 2023年10月27日 08時00分 公開
[大村康雄ITmedia]
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部下が嫌がる仕事は、成長の源泉

 とはいえ、上司も人間ですから、部下に嫌な顔されると分かっていながら仕事を振るのに気が引けてしまい、結局自分でやってしまうこともしばしば。

 そこで重要なのが、部下が嫌がるような仕事を振ったとき、もしくは、部下が忙しいときなど嫌がるようなタイミングで仕事を振ったときこそ、部下が成長するきっかけとなると考えることです。

 もちろん「これは成長のきっかけだからどんどん丸投げしてOK」ということを言っているわけではありません。

 例えば、以下のように丁寧に仕事を振る理由やサポートをする旨を説明すれば、部下も少しずつ成長していくのは間違いありません。

 「新しい仕事が入ってきたんだよね。このタイプの仕事を君が苦手としているのはよく分かっているんだけど、そろそろ克服してほしいから君に振るね。何か迷ったらサポートするから、いつでも声かけて。

 とはいえ、分からないところが分からない、という状態になるかもしれないから、毎朝状況確認の連絡入れるので忘れずに返信するように」

部下に仕事が振れない上司が陥る悪循環

 部下に仕事が振れない上司は、自分で仕事を抱え込むことになります。そうすると、部下が本当に助けを求めているときに「ちょっと待って」と待たせてしまうことにもなりかねません。それが続くと、部下はもう助けを求めにも来ないかもしれません。

 また、上司側が「あまり部下から相談が来ないようにしよう」なんて考えてしまうと、部下には簡単な仕事しか振られず、成長スピードが鈍化していきます。

 結果、(1)部下に振れないので上司が仕事を抱え込む→(2)部下からの相談で仕事を邪魔されたくない、仕事を振る際にスムーズに受け入れてほしいと、簡単な仕事しか部下に振らない→(3)部下が成長しない→(4)部下に仕事が振れない――という悪循環に陥ってしまいます。

 また、この悪循環が部下に伝わり、「うちの上司は部下に無理をさせないようにしてくれる」と感じられてしまうのは危険です。少し負荷の高い業務に対して部下が「もっと目標下げてほしいです」と言ってくるなど、もはやどちらが上司か分からないなんて状態にもなりかねません。

 また、成長を求める優秀層が離脱していく恐れもあります。

育成 (ゲッティイメージズ)

 このように、良かれと思って部下に負荷をかけないようにふるまう上司は、最終的に誰もハッピーにならない組織を作ってしまう恐れがあるのです。

部下に仕事が振れる上司が回している好循環

 では逆に、部下にどんどん仕事が振れる上司はどのような振る舞いをしているのでしょうか? このような上司は、部下に仕事を振る目的を、以下の2点だと深く理解しています。

  • チームとして付加価値を最大化するために必要なこと
  • 部下にとって負荷のかかる仕事も部下の成長にとって必要であり、部下を成長させることが自分の使命であること

 そしてその理解の元、(1)チームとしてやらねばならない仕事はやるという観点で、部下に躊躇(ちゅうちょ)せず仕事を振る→(2)部下にとって負荷の高い仕事の場合、適切にフォローに入り、育成のきっかけにする→(3)部下が成長し、フォローの手間が減る→(4)部下が成長することで、チーム全体として対応できる業務のレベルが上がる→(5)上司としても時間ができるので、新しい仕事をどんどん取りに行くことも可能になる――と好循環を生み出します。

 このような循環に入っていくことで、どんどんチームが強くなり、任せられる仕事のレベルも上がり、より社内外で存在感のあるチームになっていくことが想像できるかと思います。

着目すべきは「部下の顔色」ではなく「チームのミッション」

 部下に仕事を振ることをためらっている上司の多くが、部下の顔色を気にしているのではないでしょうか? 

 「これ振ったら嫌がられないかな」「そろそろ嫌われちゃうんじゃないかな」……。しかし、部下も良い大人です。自分が所属している部署が何を達成すべきなのか理解しているはずです。

 変に遠慮をすることなく「われわれはこのミッションを果たさなければならないから頑張ろう!」という姿勢を堅持し、勇気を持って仕事を振ってほしいと思います。そうすれば必ず全員がハッピーなチームが完成しているはずです。

大村康雄

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1982年生まれ。宮崎県延岡市出身。慶應義塾大学経済学部経済学科卒業後、米系金融機関であるシティバンク銀行(現SMBC信託銀行)入行。2007年、株式会社エッジコネクション創業。ワークライフバランスを保ちつつ業績を上げる様々な経営・営業ノウハウを構築、体系化し、多くの経営者が経営に苦しむ状況を変えるべく各種ノウハウをコンサルティング業、各メディア等で発信中。1300社以上支援し、90%以上の現場にて売上アップや残業削減、創業前後の企業支援では80%以上が初年度黒字を達成。東京都中小企業振興公社や宮崎県延岡市商工会議所など各地で講師経験多数。


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