とはいえ、上司も人間ですから、部下に嫌な顔されると分かっていながら仕事を振るのに気が引けてしまい、結局自分でやってしまうこともしばしば。
そこで重要なのが、部下が嫌がるような仕事を振ったとき、もしくは、部下が忙しいときなど嫌がるようなタイミングで仕事を振ったときこそ、部下が成長するきっかけとなると考えることです。
もちろん「これは成長のきっかけだからどんどん丸投げしてOK」ということを言っているわけではありません。
例えば、以下のように丁寧に仕事を振る理由やサポートをする旨を説明すれば、部下も少しずつ成長していくのは間違いありません。
「新しい仕事が入ってきたんだよね。このタイプの仕事を君が苦手としているのはよく分かっているんだけど、そろそろ克服してほしいから君に振るね。何か迷ったらサポートするから、いつでも声かけて。
とはいえ、分からないところが分からない、という状態になるかもしれないから、毎朝状況確認の連絡入れるので忘れずに返信するように」
部下に仕事が振れない上司は、自分で仕事を抱え込むことになります。そうすると、部下が本当に助けを求めているときに「ちょっと待って」と待たせてしまうことにもなりかねません。それが続くと、部下はもう助けを求めにも来ないかもしれません。
また、上司側が「あまり部下から相談が来ないようにしよう」なんて考えてしまうと、部下には簡単な仕事しか振られず、成長スピードが鈍化していきます。
結果、(1)部下に振れないので上司が仕事を抱え込む→(2)部下からの相談で仕事を邪魔されたくない、仕事を振る際にスムーズに受け入れてほしいと、簡単な仕事しか部下に振らない→(3)部下が成長しない→(4)部下に仕事が振れない――という悪循環に陥ってしまいます。
また、この悪循環が部下に伝わり、「うちの上司は部下に無理をさせないようにしてくれる」と感じられてしまうのは危険です。少し負荷の高い業務に対して部下が「もっと目標下げてほしいです」と言ってくるなど、もはやどちらが上司か分からないなんて状態にもなりかねません。
また、成長を求める優秀層が離脱していく恐れもあります。
このように、良かれと思って部下に負荷をかけないようにふるまう上司は、最終的に誰もハッピーにならない組織を作ってしまう恐れがあるのです。
では逆に、部下にどんどん仕事が振れる上司はどのような振る舞いをしているのでしょうか? このような上司は、部下に仕事を振る目的を、以下の2点だと深く理解しています。
そしてその理解の元、(1)チームとしてやらねばならない仕事はやるという観点で、部下に躊躇(ちゅうちょ)せず仕事を振る→(2)部下にとって負荷の高い仕事の場合、適切にフォローに入り、育成のきっかけにする→(3)部下が成長し、フォローの手間が減る→(4)部下が成長することで、チーム全体として対応できる業務のレベルが上がる→(5)上司としても時間ができるので、新しい仕事をどんどん取りに行くことも可能になる――と好循環を生み出します。
このような循環に入っていくことで、どんどんチームが強くなり、任せられる仕事のレベルも上がり、より社内外で存在感のあるチームになっていくことが想像できるかと思います。
部下に仕事を振ることをためらっている上司の多くが、部下の顔色を気にしているのではないでしょうか?
「これ振ったら嫌がられないかな」「そろそろ嫌われちゃうんじゃないかな」……。しかし、部下も良い大人です。自分が所属している部署が何を達成すべきなのか理解しているはずです。
変に遠慮をすることなく「われわれはこのミッションを果たさなければならないから頑張ろう!」という姿勢を堅持し、勇気を持って仕事を振ってほしいと思います。そうすれば必ず全員がハッピーなチームが完成しているはずです。
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