新時代セールスの教科書

「売上絶好調」から急転落 伸び悩む営業チームに共通する3つの問題点QA「売れない営業」から脱出(2/2 ページ)

» 2023年11月27日 07時00分 公開
[大村康雄ITmedia]
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成長中の営業チームを失速させないポイント

 このような失速を招かないために、どのような点に気を付ければよいのか解説します。

料金表にない大口受注を過度に褒めない

 「どうやったら、こんな大口受注ができるんだ! 寿司でも食べながらぜひ聞かせてくれ!」――こんな褒め方をすると、その営業スタッフはまたそんな大口を取ってきたいと思うでしょう。そして、他の営業スタッフも「自分も大口を取ってこよう」と気合を入れるかもしれません。

 もちろん、営業資料上に用意してあるプランは会社としても想定内ですから、どんどん大口受注が生まれるに越したことはありません。しかし、例えば「会社として新人研修を販売しているのに、営業研修を独自に開発して受注する」「DM送付を提供しているのに、他社と提携してアフターフォローのテレマーケティングをあわせて受注する」などの料金表にない大口受注は全てが良いとは言えません。このような芸当はなかなかできるものではなく、これらが当たり前になると、前述のような営業スタイルの属人化や新人育成機能の弱体化につながります。

ノウハウ共有を促す

 仮に料金表にない内容で大口の受注が生まれた場合は、どのような過程でその受注が生まれたのかヒアリングするとともに、そのノウハウを他の営業スタッフに展開するようにしてください。

 これにより、営業の属人化を防ぐことができるのはもちろん、良いノウハウはチーム全員の財産という意識が浸透します。そのようなチームでは新人が育ちやすいのは言うまでもありません。

営業資料を常に見直す

 ノウハウが共有されても忘れてしまったり、適切な場面でアウトプットされなかったりすれば意味がありません。そのような事態を防ぐために、良いノウハウはそれぞれの営業スタッフの「頭の中」や「意識すること」として眠らせるのではなく、営業資料に反映させましょう。資料を使えば自動的にそのノウハウが商談時に活用されるようにしてください。強い営業チームは高頻度で営業資料を見直し、常に新しくより良いノウハウを資料に反映させていっています。

営業 (ゲッティイメージズ)

 以上が、成長中だった営業チームが失速してしまう原因と対策です。

 冒頭で、こういったケースはスタートアップで散見されると書きましたが、スタートアップではまだまだ会社の営業スタイルとしてどのようなものを定着させるべきかが定まっておらず、その結果として受注の大口化や営業の属人化が起こっているようです。

 営業の属人化は一度起こってしまうと不可逆です。

 自分なりのスタイルで稼いでいる営業スタッフに「あなたのスタイルはみんながまねしにくいから、みんなと合わせてほしい」と言ったらどうなるかを想像してもらうと分かると思います。一度この事態に陥ってしまうと、営業チームを作り直すくらいの手戻りが発生することもあります。

 ここで解説したポイントを押さえた営業チーム運営を行い、成長を止めないようにしてもらいたいと思います。

大村康雄

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1982年生まれ。宮崎県延岡市出身。慶應義塾大学経済学部経済学科卒業後、米系金融機関であるシティバンク銀行(現SMBC信託銀行)入行。2007年、株式会社エッジコネクション創業。ワークライフバランスを保ちつつ業績を上げる様々な経営・営業ノウハウを構築、体系化し、多くの経営者が経営に苦しむ状況を変えるべく各種ノウハウをコンサルティング業、各メディア等で発信中。1300社以上支援し、90%以上の現場にて売上アップや残業削減、創業前後の企業支援では80%以上が初年度黒字を達成。東京都中小企業振興公社や宮崎県延岡市商工会議所など各地で講師経験多数。


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