このような失速を招かないために、どのような点に気を付ければよいのか解説します。
「どうやったら、こんな大口受注ができるんだ! 寿司でも食べながらぜひ聞かせてくれ!」――こんな褒め方をすると、その営業スタッフはまたそんな大口を取ってきたいと思うでしょう。そして、他の営業スタッフも「自分も大口を取ってこよう」と気合を入れるかもしれません。
もちろん、営業資料上に用意してあるプランは会社としても想定内ですから、どんどん大口受注が生まれるに越したことはありません。しかし、例えば「会社として新人研修を販売しているのに、営業研修を独自に開発して受注する」「DM送付を提供しているのに、他社と提携してアフターフォローのテレマーケティングをあわせて受注する」などの料金表にない大口受注は全てが良いとは言えません。このような芸当はなかなかできるものではなく、これらが当たり前になると、前述のような営業スタイルの属人化や新人育成機能の弱体化につながります。
仮に料金表にない内容で大口の受注が生まれた場合は、どのような過程でその受注が生まれたのかヒアリングするとともに、そのノウハウを他の営業スタッフに展開するようにしてください。
これにより、営業の属人化を防ぐことができるのはもちろん、良いノウハウはチーム全員の財産という意識が浸透します。そのようなチームでは新人が育ちやすいのは言うまでもありません。
ノウハウが共有されても忘れてしまったり、適切な場面でアウトプットされなかったりすれば意味がありません。そのような事態を防ぐために、良いノウハウはそれぞれの営業スタッフの「頭の中」や「意識すること」として眠らせるのではなく、営業資料に反映させましょう。資料を使えば自動的にそのノウハウが商談時に活用されるようにしてください。強い営業チームは高頻度で営業資料を見直し、常に新しくより良いノウハウを資料に反映させていっています。
以上が、成長中だった営業チームが失速してしまう原因と対策です。
冒頭で、こういったケースはスタートアップで散見されると書きましたが、スタートアップではまだまだ会社の営業スタイルとしてどのようなものを定着させるべきかが定まっておらず、その結果として受注の大口化や営業の属人化が起こっているようです。
営業の属人化は一度起こってしまうと不可逆です。
自分なりのスタイルで稼いでいる営業スタッフに「あなたのスタイルはみんながまねしにくいから、みんなと合わせてほしい」と言ったらどうなるかを想像してもらうと分かると思います。一度この事態に陥ってしまうと、営業チームを作り直すくらいの手戻りが発生することもあります。
ここで解説したポイントを押さえた営業チーム運営を行い、成長を止めないようにしてもらいたいと思います。
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