自治体DX最前線

誰でも「ベテラン職員並み」に? NECと相模原市「国産生成AI」の共同検証へ住民も期待

» 2023年11月29日 12時00分 公開
[岡安太志ITmedia]

 生成AIの急速な発展に伴い、ビジネス分野への活用方法の模索が続いている。それは自治体も例外ではない。NECと神奈川県相模原市は10月、自治体業務における生成AI活用に向けた協定を締結した。自治体業務に特化したLLM(大規模言語モデル)の構築は、NECとして初めての試みだ。

協定締結式の様子(左:NEC 執行役Corporate SEVP 田中繁広、右:相模原市 市長 本村賢太郎、出所:プレスリリース)

 今、NECを含む大手ITベンダー各社は「国産生成AI」の実用化を急いでいる。ChatGPTをはじめとした海外発のLLMは汎用性が高い一方で、専門知識が求められるタスクには弱い。英語をベースとしているため、日本語で使うにはコスト効率も良いとはいえない。そこで日本語をベースに開発した、軽量かつ信頼性の高い国産生成AIに注目が集まっているわけだ。

相模原市役所(提供:相模原市)

 相模原市役所への検証実験を開始する時期は現在最終調整中とのことだが、NECが提案している活用アイデアはこうだ。

誰でも「ベテラン職員並」のパフォーマンスを発揮?

 一つは例規集など庁内にたまっているナレッジをLLMに学習させ、職員が資料を探したり、事務手続きを確認したりする手間を大幅に削減させる試みだ。専門的な知識を学習させることで、汎用的なテキスト生成AIではできないような実務的な問いかけにも正確に応えられるようになる。

 2つ目は仕様書の作成を支援するもの。どんな案件の仕様書を書きたいのか、職員が規定のフォーマットに入力して指示を出すことで、過去案件の仕様書データなどをもとに自動で仕様書案を作成する。過不足があれば修正指示を出すことも可能だ。

 3つ目は「総合窓口アシスタント」だ。自治体の窓口における住民からの相談はさまざまであり、その全てに的確に応えるには職員でも熟練が求められる。そこで、LLMに複雑な規定の対応履歴などを学習させることで、住民への回答例を出力するというものだ。これにより「ベテラン職員並」の対応力を誰でも発揮できるようになることを目指す。

 現時点では、セキュリティ上の万全を期すために「住民の個人情報に関わる情報は学習させない予定」(相模原市)とのことで、実際に現場で扱えるようになる機能については慎重に検討しているという。

 相模原市の担当者は今回のNECとの共同検証について「思ったよりもたくさんの自治体が注目している」と、想定以上の反応に驚いているとしつつ、「今までDXの分野で相模原市がチャレンジするニュースは少なかった。住民の皆さまから応援の声も頂いているため、今回の共同検証をしっかりと進めていきたい」と話した。

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