中国miHoYoが開発・運営するアクションロールプレイングゲーム『原神』の人気がすさまじい。
The Game Awardsで2021年のベストモバイルゲームをはじめ多くの賞を受賞し、ゲーム業界やメディアの注目を集めている。調査会社ActivePlayerによると、23年3月までのプレイヤー総数は6500万人を超えている。
開発・運営元のmiHoYoの業績も好調であり、中国メディアの報道によると22年の売上高は273億4000万元(約5700億円)、純利益は161億4500万元(約3400億円)に届く。原神はなぜここまで成功しているのだろうか。
よく見る論調としては、美麗なグラフィック・質の高い音楽・日本市場で人気の(もはや死語となった)萌えを意識したキャラクター、といったものである。ただこれらは昨今競争が激しいゲーム市場においてはサービス維持に向けた必要条件にすぎず、的を射ていない。
本記事では、原神とmihoyoの成功の要因について、同社の具体的な取り組みや、実際に世界各地の原神プレイヤーと交流・インタビューを行って得た情報などを基に分析する。
原神の成功には、大きく3つの要因が絡んでいる。(1)市場環境に合致した要素を独自に組み合わせた設計、(2)コア層育成よりも離脱防止を重視した運営と設計、(3)計画的・継続的なアップデートとwebサービスを活用したプロモーションの3点だ。まずは(1)について紹介したい。
原神はオープンワールド型のアクションRPGというジャンルに位置付けられる。オープンワールド型とは字義通り、ゲーム内の広大なマップを制限なく探索できるようなゲームを指す。同ジャンルは近年世界中で人気が高く、多くの名作やヒット作が存在する。『ゼルダの伝説シリーズ』『ELDEN RING』『Horizonシリーズ』などが代表例である。
原神のオープンワールドの特徴は、現実世界の国・地域をモデルにした風景や、地形・建築物などと現実世界との「ゆるい」つながりを設けていることや、天候や時間、季節の概念などを取り入れ、常に変化がある設計となっている。
原神はアニメ風のグラフィックとキャラクターを特徴としている。一昔前であればアニメ風の絵柄は子ども向けであり、特にグローバル市場では多くのプレイヤーを獲得できないとされていた。
ただ近年の日本アニメ産業の成長により、この構図が変わってきた。今や子どもから大人までこの「アニメ風」絵柄は浸透しており、東アジア市場ではもちろん、欧州・中東・北中米・南米と世界中で受け入れられている。
なお筆者が延べ100人以上の世界各地のプレイヤーと交流・インタビュー調査を行ったところ、9割以上のプレイヤーは原神を始める前に何らかの形でアニメなどの日本のコンテンツに触れており、アニメや漫画のファンの延長として原神を始めるカスタマージャーニーがうかがえる。
余談であるが、本調査において約2割のプレイヤーが原神は日本の会社によるゲームと認識していた。これは、日本のアニメがグローバル市場でプレゼンスを向上させている証左といえるだろう。実際に本場中国の学校において、学生がゲーム内のイベントをもとにした演舞を行ったところ、日本のコンテンツであるという誤解を理由に校長から叱責・批判される“事件”が報道されている。
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