マーケティング・シンカ論

ゼクシィの「同性カップル広告」狙いはどこに? 背景に未曾有のブライダル不況スピン経済の歩き方(4/7 ページ)

» 2023年12月05日 11時11分 公開
[窪田順生ITmedia]

「結婚式をあげたいカップル」を引っ張ってくる

 かつてのように結婚式場で、親族や幼馴染、会社の上司や同僚を呼ぶ派手な披露宴などをしても、「お金の無駄」と考えるような若い人が増えている。「だったらいくつか食事会を開いて、海外旅行とかに回したりマンションの頭金に回したりするほうがよい」といった実利主義的なカップルも増えている。

 実際、マイナビが22年6月から1年間で結婚したカップルのうち、結婚式を挙げた人は前年比0.7ポイント減の45.3%だったという。しかも、20代は33.9%にとどまっていた。若者で結婚式を挙げるのは、今や完全にマイノリティーなのだ。

結婚式を挙げた人の比率(出典:マイナビ)
結婚式を挙げない理由(出典:マイナビ)

 さて、このように深刻な「ブライダル不況」のまっただ中で、結婚式場や結婚式を運営する会社からの広告を頼りにしているゼクシィとして、どういうマーケティングを仕掛けていくかといえば、「結婚式場の利用増」につながるようなものでなければいけない。

 「結婚っていいですよ」「家族になろうよ」なんて広告やキャンペーンは30年ほど前から山ほど仕掛けてきた。しかし、それでも結婚する人は20年ほど前から右肩下がりで、少子高齢化に歯止めはかからない。本連載の『50年前から分かっていた少子高齢化問題、なぜ回避できなかったのか』の中でも詳しく解説したが、日本はこの半世紀、莫大な税金を注ぎ込んで、少子化対策をしてきたが「成果ゼロ」なのだ。

 こういう厳しい現実を受け入れれば、ゼクシィがやるべき方向はおのずと決まってくる。全くこれまでと違うところから「結婚式をあげたいカップル」を引っ張ってくるしかない。しかし、外国人カップルは日本の場合、いまだに「鎖国」が続いているようなものなので難しい。となると、残るはここしかない。

 そう、LGBTQだ。

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