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携帯ショップに警備会社──不人気業種でも「人が集まり辞めない」企業がある その秘密は?働き方の「今」を知る(3/6 ページ)

» 2023年12月07日 07時00分 公開
[新田龍ITmedia]

「個人ノルマなし」でも、厳しくないワケではない

 とはいえ、収益を上げるには相応の販売実績が必要だ。同社は販売実績も高いレベルであるゆえ、よほど厳しいノルマが課されているものと思われるかもしれない。しかし驚くべきことに、同社には個人の販売ノルマは存在しない。あるのは店舗単位での販売目標だけだ。それをメンバー同士でフォローし合いながら達成することで、先述の高い報酬水準を実現できているというわけだ。

 しかもノルマを無理強いしないから強引な押し込み販売もなく、来店客の満足度は向上する。販売実績も顧客満足度も高いことから、同社は各キャリアに対して強い発言力を持ち、キャリア各社から余計なタスクが降ってこないよう、社長が壁になって社員の労働環境を守っているのだ。                             

 労働環境といえば、以前は同社でも相応に残業が発生していたが、そんな状態を根本から見直し、残業削減に取り組んだのは、社長の号令によるものだ。

 残業自体を申請制にするとともに、残業発生の要因となっていた閉店後の清掃作業を開店前に移動させるなど数々の手を打つことで、現在の全社平均月残業10時間程度を実現させている。

 ここまでを見てきた限り、まったく死角のないパーフェクトな会社のように感じられてしまうが、やはり業種ならではの大変な面もある。仕事柄、常に専門知識のアップデートが必要であるし、勤怠にも厳しい。個人ノルマはないとはいえ、チーム目標は相応に高い水準を追うことになるので、チームワークを発揮して頑張れること、そして社外でも通用する人間性を養成するにあたっては成長意欲も必要だ。

画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ

 労働・職場環境が整っており、離職率が低く、福利厚生や研修など、従業員へのサポート体制も手厚い企業のことを総称して俗に「ホワイト企業」と呼ばれる。

 ホワイト企業にもいくつか種類があり「仕事はラクだしプレッシャーもないため居心地は良いが、ルーティン業務中心で成長実感が持てず、年功序列のため成果を挙げても給料が変わらない」という「まったりホワイト企業」もあれば、「高給と引き換えに要求水準が厳しく、相応の業務量であっても定時までに必ず終わらせなければならないプレッシャーに日々直面する」という「高密度ハードワークホワイト企業」もまた存在する。

 すなわちアドバンス社は後者タイプに属する「高密度ハードワークだが、報酬も定着率も従業員エンゲージメントも高い優良ホワイト企業」といえるだろう。

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