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携帯ショップに警備会社──不人気業種でも「人が集まり辞めない」企業がある その秘密は?働き方の「今」を知る(4/6 ページ)

» 2023年12月07日 07時00分 公開
[新田龍ITmedia]

(2)株式会社BONDSグループ(東京都・保安警備業)

 厚生労働省が発表した9月の有効求人倍率(季節調整値)は1.29倍。昨年来おおむね1.3前後を推移しているこの数字は、「求職者100人あたり129件の求人数がある」という状況を表しており、コロナ禍で一時的に落ち込んでいた採用ニーズがコロナ前の水準を回復し、人手不足の状況にあることを示している。

 ただし、この1.29倍という数字はすべての業種・職種を平均したもの。中にはその仕事を希望する求職者数の割に、求人数のほうが圧倒的に少ない職種もあり、例えば「一般事務」や「会計事務」「デザイナー」といった一部の専門職がいわゆる「人余り」状態になっている。求人倍率は0.20〜0.67倍だ。

 一方で、いくら求人募集をしても人が全く採用できていない、極度の人手不足業種もある。代表例は「建設工事(躯体)」であり、その求人倍率はなんと9.17倍。そして、その次点に位置しているのが「保安・警備業」の7.02倍である。求職者100人あたり700件以上の求人が寄せられている計算だ。

 警備業界は事業者数が多く、仕事の需要もある割には求職者が少ないため、慢性的に人手不足の様相を呈している。これには、業界ならではの構造的な問題が関わっているのだ。

画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ

 まず読者諸氏もイメージされるように、夜勤や早朝勤務、また野外のため夏は暑く冬寒いといった労働環境の厳しさが挙げられる。体力的に過酷な割に平均年収は低めで、厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、警備員(正社員)の平均年収はおよそ335万円。国家資格である「警備員指導教育責任者」「機械警備業務管理者」などを取得してもさほど年収に反映しないケースも多く、忌避されやすい要素がそろってしまっている。

 また「警備業法」という法律によって細かい規定がなされており、派遣スタッフは就業できなかったり(※1)、再委託が困難だったり(※2)と、そもそも柔軟な働き方が実現しにくいうえ、新人は雇用形態に関わらず20時間以上の研修を義務付けられており、それだけで4〜5日ぶんの稼働が割かれてしまうことなど、硬直的な業界体質が構造上残っている。

※1:厚生労働省「労働者派遣事業を行うことができない業務
※2:警察庁「警備業務の共同実施に関する指針について

 さらには他の現業系職種とは異なり、警備員は労働基準法の一部の項目(残業代や、休日・休憩に関する規定)が適用されない。したがって、深夜に12時間拘束の勤務が普通に存在していたり、残業代が支払われなかったり、休憩や休日の取り方も独特であったりするなどの特殊性もあるところなどが、ネガティブ要素となっていると考えられる。

 このような厳しい環境の中、経営者自らの営業努力によって好業績と高待遇を実現し、「渋谷ハロウィン」をはじめとする各種有名イベントでの警備実績を豊富に保持、メディア戦略の成功もあいまって、今や求人サイトを用いずとも、自社メディアからの情報発信だけで採用が充足してしまっている警備会社。それがBONDSグループだ。

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