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シブサワ・コウ明かす『信長の野望』位置情報ゲーム進出の狙いJR東海ともコラボ(1/2 ページ)

» 2023年12月14日 08時00分 公開

 『ポケモン GO』『ドラゴンクエスト(ドラクエ)ウォーク』といったヒット作を生み出している位置情報ゲーム。2016年に『ポケモン GO』がリリースされて以降、全世界の累計収益は65億ドル(9644億円)以上に。遅れること3年の19年に出た『ドラクエウォーク』も17億ドル(2542億円)の累計収益を突破した 。

 市場規模が非常に大きく、また先行作品が市場を寡占している構造ではないため、後発のIPでも期待できるゲームジャンルと言える。23年に入ってからも、8月末に『信長の野望 出陣』(以下『出陣』)、9月には『モンスターハンター(モンハン)Now』が登場した。『ポケモン GO』が出て7年経った今もジャンルとしての勢いを増している。

 特に『出陣』は、「信長の野望」のシリーズ40周年を記念してリリースした作品だ。歴史シミュレーションゲームが位置情報ゲームに進出した狙いは何か。シブサワ・コウことコーエーテクモホールディングスの襟川陽一社長、コーエーテクモゲームスで『出陣』の開発プロデューサーを務める菊地啓介さん、同社で「信長の野望」シリーズのIPプロデューサー、『出陣』のプロデューサーを務める小笠原賢一常務の3人に話を聞いた。

シブサワ・コウことコーエーテクモホールディングスの襟川陽一社長

位置情報ゲーム進出の狙いは?

――『出陣』はシリーズ初の位置情報ゲームとして展開しています。どういった経緯からスタートしたゲームなのでしょうか。

シブサワ: 当社の年度経営方針で、グローバルIPの創造と展開を経営方針にしています。これは大きく2つに分けて言うと、1つはIPを創造することです。もう1つが、そのIPを「プラットフォーム展開」「タイアップ展開」「コラボ展開」「グローバル展開」、そして「ジャンル展開」の5方面に展開するものです。

 この「ジャンル展開」戦略の位置付けとして、新たなゲームジャンルの「信長の野望」を展開しようとする企画が持ち上がりました。

――40年続く「信長の野望」シリーズだけでも、元来の歴史シミュレーションゲームだけでなく、近年は他ジャンルへ展開しています。

シブサワ: 『信長の野望 Online』ではMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)ですし、ソーシャルゲームの『100万人の信長の野望』はカードゲームとして出しています。ニンテンドーDSのゲーム『ポケモン+ノブナガの野望』は『ポケットモンスター』とタイアップしたシミュレーションRPGです。そして位置情報ゲームとして23年8月31日にサービスを開始したのが『出陣』になります。

――なぜ位置情報ゲームで展開しようと考えたのでしょうか。

シブサワ: 既に『ポケモン GO』や『ドラクエウォーク』などの成功タイトルがあり、マーケット自体が非常に大きく、プレイヤーの年齢層も上は高齢者の方まで幅広いことが分かっています。

 また「信長の野望」シリーズは、今年でちょうど40周年になります。歴史のあるタイトルで、非常にファン層が厚く、恵まれています。たくさんの若い人から60代70代まで楽しんでいただける、40周年記念にふさわしいゲームになるなという気持ちもありました。

 開発プロデューサーの菊地が提案をしてきて、これは素晴らしいタイミングだなと思いました。応援団長としてぜひやっていきましょうということでスタートしました。

――スタートして3カ月半ほど経ちますが、手応えはいかがでしょうか。

シブサワ: SNSでの反響はすごいです。どこの城に行って武将をもらったとか、さまざまな情報が発信されていますね。私も1ユーザーとしてプレイしていますけど(コーエーテクモの社屋がある)横浜市西区と港北区を100%制覇しました。

――常にスマホ片手に持ち歩く必要のある他のゲームと違い、『出陣』では「委任」機能によってスマホをしまったままでも自動的にゲームを進行できます。

シブサワ: 「委任」もしています。歩くのが一番楽しいですよね。私は朝の4時や5時ぐらいに起きて、早朝散歩しています。不審者だと思われないように念のために身分証明書を携帯しながら、それから水分補給を怠らないよう水も欠かせないですね。携帯はポケットに入れながら委任して歩いています。

 散歩していると、同じようにゲーム目的の人が結構朝早くから歩いているんですよね。『出陣』をやっている人もいますし、『ドラクエウォーク』や『ポケモン GO』、9月にスタートした『モンハンNow』を遊んでいる人もいます。今こうしたウォーキングゲームの種類が増えてきたので、ゲームを楽しみながら散歩している人が明らかに増えていると感じています。

――16年の『ポケモン GO』から7年が経ち、ウォーキングゲームは一過性のブームにとどまらず、作品数も年々増えています。なぜここまで定着したのでしょうか。

シブサワ: 健康志向の高まりがあると思います。一般のゲームは座ったままプレイしますから、運動不足になりがちです。外を歩いて、歩数によってどんどんいろんなアイテムをゲットしたり、『出陣』の場合は領地も広げたり、多様な楽しみ方があります。

――架空世界が舞台となっていることの多い他作品に比べ、『出陣』では現実にあった日本が舞台になっているのも特徴だと思います。

シブサワ: 戦国時代の花というと、やっぱりお城だと思うんですね。今も残っているお城や名所旧跡に歩いて行くことで、そこでいろんな出会いがあったり、武将やアイテムをゲットできたりすることで歴史との親和性が高いのが魅力だと思います。『信長の野望』シリーズが「歴史を楽しむ」ことをキーコンセプトにしていますから、歴史を楽しみながら歩いて健康になれる点で、『出陣』は人気が出ると確信しています。

――『出陣』を企画した菊地プロデューサーは、どういったところからゲームを作っていったのでしょうか。

菊地: 「信長の野望」シリーズの舞台は日本で、それも実際にあった武将やお城や合戦を描いています。城跡や合戦場跡など、今でもその場所に行くと本当に実在するものなんですよね。そういった要素と、位置情報ゲームはすごく親和性があるので、企画として何度も出ていました。

 それを今回「midasブランド」という新しいアプリ専門の部署が挑戦する形で、私が担当しました。『信長の野望』の楽しさを凝縮したい思いから、シリーズ全体を統括するチーフプロデューサーの小笠原と「シブサワ・コウ」ブランドのスタッフたちにも入ってもらいました。そこで小笠原が最初に言ったのが「『信長の野望』は領地を広げていくところが楽しいんだ」という話だったんですね。

 歩いて自分の実際の土地を自分のものにしていく、その楽しさが『信長の野望』で領地を広げていく楽しさだと最初にアドバイスをもらい、これをコンセプトとして全体的に設計を見直して、何度も試行錯誤しながら開発していきました。

コーエーテクモゲームスで『出陣』の開発プロデューサーを務める菊地啓介さん(左)、同社で「信長の野望」シリーズのIPプロデューサー、『出陣』のプロデューサーを務める小笠原賢一常務
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