個人的には「タレントの活用がダメである」とは思っていません。むしろ、正しくタレントを活用することは大きな武器になると思っています。大事なのは、プロダクトのコンセプトを際立たせ、きちんと世界観を作り上げることです。その世界観にマッチするタレントがいた場合は、活用してメッセージを届けるのは効果的です。
例えば、出川哲朗さんを起用した、ECプラットフォーム「ecforce」の動画は効果的な事例だと思います。どれだけ製品が魅力的でも、どれだけブランディングが鮮やかでも、どれだけ広告が強くても「ECカートシステムに穴があると売り上げを逃してしまう」という、自社のコンセプトや強みを伝えるために、落とし穴の有識者として出川哲朗さんを起用。
視聴者には、出川さんが数々のバラエティ番組で落とし穴に落ちてきた姿が想起され、結果としてECforce社のコンセプトも齟齬なくユーザーに届いていると思います。
また、メジャーリーガー・大谷翔平さんを活用したセールスフォース社の動画もコンセプトと起用理由がリンクしている事例です。
セールスフォースは「次の世界へ」というコンセプトのもと、「変化を恐れる人ではなく、自ら変化を作りだす人になろう」というメッセージを訴求しようとしていました。そんなセールスフォースの打ち出したいメッセージにぴったり当てはまっていたのが、大谷さんでした。彼は誰もが不可能と思っていた投手と野手の“二刀流”に挑戦し、メジャーリーグに新しい変化と歴史を次々と生み出していっています。セールスフォースと大谷さんのスタンスがマッチし、意味のある起用となっています。
やみくもなタレント起用が効果を生まなくなっただけであり、活用自体が悪いわけではありません。サービスのコンセプトや価値を際立たせ、その価値にきちんと当てはまる著名人がいるのであれば、コンセプトの認知をぐっと高めるきっかけになるでしょう。
このような点を踏まえると、SaaS企業の動画広告はやみくもな認知を獲得するフェーズから、サービスのコンセプトや価値を際立たせ、それを伝えていくフェーズになっていることが分かります。1周回って、正しい方向に原点回帰しているのです。
B2Bマーケティング戦国時代となった今、動画を用いて顧客に選ばれるために最も大事な第一歩は、自社の独自性やコンセプトを認識することです。決して派手な演出を考えることではありません。自社ならではのコンセプトこそが、マーケティング成果の勝負を分けるでしょう。
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