ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)で「参謀長」と呼ばれているのが、チーフオブスタッフ兼CEO室長の佐々木陽介さんだ。佐々木さんはChief of staff(チーフオブスタッフ)、日本語で言えば「参謀長」として、CEOの補佐役や、ソフトバンクグループ(SBG)とのパイプ役をしている。
佐々木さんはメガバンク出身で、SBGでも財務畑を歩んできた。SVFで数々のスタートアップへの投資を手掛け、今はロンドンを拠点にしている。出資先の多くは海外の企業だ。佐々木さんはその中で、孫正義氏の先を見通す力や卓越した判断を見る機会もあったという。
日本のスタートアップ市場に未来はないのか。佐々木さんに話を聞くと、一味違った日本の将来図が見えてきた。
――佐々木さん自身はSVFのチーフオブスタッフ、日本語で「参謀長」という役職に就いています。これはどういうお仕事なのでしょうか。
CEOやマネジメントのサポート業務をしています。基本的にCo-CEOのラジーブ・ミスラと一緒に行動をしています。ミーティングに同席して、彼の経営判断をサポートするための資料を準備しています。他にもラジーブに話が行く前に、僕のレベルで判断ができるものであれば、そこで判断をして返したりもしています。
僕はSBGにいた人間ですので、同社とのパイプ役もしたりしています。チーフオブスタッフの仕事ではないのですが、僕は日本人スタッフですので、投資先企業の日本進出をサポートすることもありますね。
――佐々木さんは2003年にソフトバンクに入社しています。それ以前はどのようなキャリアを歩んだのでしょうか。
大学を卒業後、1999年4月に東京三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行しました。3年ほど働いていたのですが、仕事が面白いものと思えず、辞めてしまいました。その後1年ほど登山に明け暮れたのち、転職活動をしてソフトバンクに入社しました。入社したのは2003年の8月11日。孫の誕生日に入りました。入ってから知ったのですが(笑)。
入社してからは、財務部でM&Aや資金調達業務に携わっていました。その後SVF1が立ち上がり、その専任になった形ですね。
――財務畑では孫会長兼社長と仕事をする機会もあったそうですね。佐々木さんから見て、孫会長はどんな人物なのでしょうか。
20年近く一緒に仕事をさせていただきましたが、すごいなと思うのは、10年後20年後を見通す力ですね。これがあるからこそ、ブロードバンドに始まり、モバイルインターネット、iPhoneの国内販売、中国のアリババへの投資、アームの子会社化までを成功させてきたのだと思います。未来を見通す力は本当に卓越していると思います。また、意思決定も迅速です。
――日本のスタートアップ企業の将来性についてはどう見ていますか。
国内のスタートアップ企業は、【ソフトバンク・ビジョン・ファンド“参謀長”に聞く 日本発スタートアップへの投資が少ない理由】でお話しした、ソフトバンクグループ企業の一つでAI特化型ファンドの「ディープコア」が、アーリーなスタートアップを見ています。私も1年ほど前から手伝っており、日本発のスタートアップでもかなり面白い企業が多くあると思っていますね。
例えばアーリーなのに最初からグローバルを目指している会社があったり、最初からグローバルで戦うことを念頭に置いて、日本の会社でありながらシンガポールで起業する会社があったり、本社を英国に移したりする会社があったりします。本当にグローバルマインドを持った企業がたくさんあります。
日本のアーリーのスタートアップがどんどん育っていって、レイターのステージになったら、今度はSVFが投資する。そんなサイクルが生まれてくるといいなと個人的には思いますね。
――SVFの今後のビジョンはどう描いていますか。
これは個人的な思いもあるのですが、SVFが出資している海外の投資先がどんどん日本に来てくれて、日本に面白いテクノロジーを紹介してほしいですね。それで日本のスタートアップや日本の産業自体が盛り上がる刺激になればと思います。こうした動きが日本の起業家にも影響を与えて、さらなる好循環につながってほしいと思います。
――それがひいては日本経済を活性化させるわけですね。
そうですね。先ほど最初からグローバルを目指す日本のスタートアップの話をしました。日本市場だけに閉じているとデカコーン(100億ドル、約1兆5000億円を超える巨大未上場企業)にはなかなかなれません。日本からグローバルで通用するスタートアップが出たら素晴らしいですよね。日本発のグローバルスタートアップをSVFが投資できるような流れを生み出していきたいと考えています。
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