2023年12月18日、JR東海は鉄道車両向け燃料電池の模擬走行試験を報道公開した。燃料電池は水素を燃料とし、大気中の酸素と化学反応して発電する仕組みだ。簡単にいうと中学で習った「水の電気分解」の逆向きの反応で電気と水をつくる。ガソリンや軽油を燃やすと排気ガスが発生するけれども、燃料電池は水が出るだけ。二酸化炭素も有毒物質も出ないから、環境に優しく、脱炭素動力の切り札ともいわれている。
JR東海の燃料電池実験施設。外側に水素タンクと減圧装置、内部に燃料電池。水素エンジンも展示されていた(筆者撮影)
JR東海の「統合報告書2022」に「車両走行試験装置を用いた模擬走行試験を準備」とあり、「統合報告書2023」で、「23年11月から車両走行試験装置を用いた模擬走行試験を開始」と報告していた。11月16日には「燃料電池とあわせて水素エンジンも開発する」と発表していた。
報道公開された設備は、トヨタが21年から外販している燃料電池ユニットと、冷却用ラジエーター、水素タンク、減圧装置、発生した電力で動かす模擬台車と司令室だ。水素エンジンは中型トラック用のエンジンが展示されており、鉄道用の水素エンジンはこれから開発するとのことだった。水素エンジンの特徴はレトロフィット、既存のエンジンを応用し、燃料供給系と噴射系を変更すればつくれる。JR東海によると、すでに搭載されているエンジンを水素化するのではなく、あらたに水素エンジンを開発するとのこと。鉄道用としては世界初のチャレンジになる。
司令室。ここから台車の発進、加速、減速、停止まで操作できる(筆者撮影)
司令室で表示されていたパワーフローモニター。速度、電力出力、水素流量をリアルタイムで表示する(筆者撮影)
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