では、なぜこうなるのかというと、先ほど再掲した過去記事の後半にも登場する「員数主義」というものが原因だと考えている。
これは、評論家の山本七平氏が指摘していた旧日本軍の大本営から現場の一兵卒まで蝕(むしば)まれていた「組織病理」だ。山本氏によれば、敗戦後に復員した人の多くが日本軍敗退の原因だと証言しているという。
旧日本軍内では、部隊に支給される物資の現物数と、帳簿上の数が一致しているかを確認する員数検査というものが行われた。そこで帳簿の数と現物数が一致しないと、担当者から「馬鹿野郎! 員数をつけてこい」と怒声が飛んだ。
これは「どこかから盗んででも、他部隊から奪ってでもなんでもいいからとにかく数字の帳尻合わせをしろ」という意味だ、と当時、下級士官だった山本七平氏は解説する。
つまり、員数主義とは「表面上の帳尻さえ合えば、ちょっとくらいの不正はセーフ」という組織文化のことなのだ。
筆者はこの員数主義が戦後、形を変えて忠実に受け継がれたのが日本企業だと考えている。なぜかと言うと、企業危機管理の仕事をしてから、この員数主義を嫌となるほど目の当たりにしてきたからだ。
さまざまな不正や不祥事の現場で、「納期に間に合わなかった」「いまさら仕様を変えたら取引先に迷惑がかかるので仕方なく」「ノルマを達成するためにはこうするしかなかった」という言い訳を聞く。つまり、日本軍と同じく、「員数を合わせるためには、多少のインチキや不正は許される」という考え方がまん延しているのだ。
筆者もサラリーマンをしていた時代もあるので、どんなに見苦しい言い訳をしても組織を守りたい、という気持ちは痛いほど分かる。ただ、残念ながらダイハツを見ても分かるように、そういう員数主義はどんなに時間が経過してもバレてしまうものなのだ。
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