では、なぜそんなインチキをしたのか。当時、虚偽報告の「主犯」とされた下請け企業の社長は、「データが汚いと、親会社がいやがる」(同上)と動機を告白。さらに元請けの日立製作所の常務も、そういうプレッシャーに対して以下のように理解を示している。
「仕事をもらう会社の立場にたって考えれば、仮にやり直しをさせられるとなると面倒だろうしその気持ちも……」(同上)
もうお分かりだろう、今騒がれているダイハツの不正の「動機」と丸かぶりだ。80年代から日本のものづくり企業は「過度にタイトで硬直的な開発スケジュール」に追い込まれ、親会社のプレッシャーからデータをいじったり、虚偽報告をするなどのインチキを続けていたのだ。
では、その「不正文化」はどこから来るのかをたどっていくと、80年代どころではなく高度経済成長期も、戦後の復興期にも見られる。その都度いろんなバラエティーに富んだ言い訳をするが、根っこをたどれば「納期のスケジュールに合わせようと」「過剰なノルマに追い込まれて」という数字合わせが理由で、インチキに手を染めている。
そして、そういう不正に走る者の多くが、「組織に忠実な真面目な人」なのだ。
これは旧日本軍でまん延していた不正も同じだ。「馬鹿野郎! 員数をつけてこい」と怒声を浴びせられて、他部隊から物資を盗むなどの不正に手を染めていたのは、上官から命じられれば玉砕も厭(いと)わないような「組織に忠実で真面目な人」だ。
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