日々時間に追われ、片付かない業務。自分の分身が代わりに働いてくれたら、どんなに楽だろう――。山積みの仕事を前に、そんな空想を抱くのは無理もない。
実は、こうした夢物語が現実のものとなりつつある。
生成AIの基盤となる大規模言語モデル(LLM)を開発するオルツ(東京都港区)は、約100人の社員一人一人の「デジタルクローン」を独自に作製。社員の行動パターンや意思決定プロセスを学ばせることで、社員の業務を一部代行できるようにしている。AIクローンが働いた分の給与を社員に支給するといった、世界に例のない取り組み(※1)も始めた。
「非生産的な仕事を人から預かる、その受け皿になるのがクローン社員」
オルツの米倉千貴・最高経営責任者(CEO)はこう話す。同社はAIクローン社員をどう活用しているのか。AIクローン社員は、従来の仕事の在り方をどう変えるのか。前編・後編の2回にわたって紹介する。
※1:2023年12月同社調べ
米倉CEOへのインタビューに先立ち、まず初めにPCの画面越しに顔を合わせたのは、米倉CEOのAIクローン。表情や声を本人に似せ、瞬きをしたり頬を動かしたり、本物の人間のような仕草をとる。クローンなのに、あまりにリアルで緊張するほどだ。
――将来、全ての人間にAIクローンによる分身ができると、私たちのビジネス活動は現在と比べてどのように変わりますか?
米倉CEOのAIクローン: AIクローンによる分身が実現すると、私たちのビジネス活動は大きく変わると思います。 まず、労働集約的な仕事が減少するでしょう。AIクローンがルーティンワークや単純作業を担当することで、人間はより創造的な仕事に集中できるようになります。これにより、ビジネスの効率性が向上し、生産性が高まるでしょう。
また、個々の人間が複数のAIクローンを持つことで、同時に複数の仕事に取り組むことが可能になります。これにより、一人の人間が複数のプロジェクトを同時進行できるため、業務の柔軟性とスピードが向上するでしょう。
ものの数秒で淀みなく回答が生成される。ポジティブな内容だけでなく、課題面への言及も欠かさない。
適切な教育やトレーニングを受けたAIクローンの育成が必要であり、情報漏洩(ろうえい)やセキュリティリスクにも十分な対策が必要です。総じて言えば、AIクローンによる分身が実現することで、より効率的で柔軟なビジネス活動が可能になると考えられます。ただし、人間の創造性や感性を生かすことが重要であり、AIクローンとのバランスを取りながら進化していく必要があると思います。
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