「幸せ」に働く若手社会人に共通する特徴とは?(1/3 ページ)

» 2024年01月19日 08時00分 公開
[砂川和泉ITmedia]

この記事は、パーソル総合研究所が2023年11月22 日に掲載した「社会人になってからのどのような経験が仕事で幸せを感じて活躍することにつながるのか」に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。


 これからの社会を生きる若手社会人にとって、幸せを感じながら仕事をし、パフォーマンスを発揮することは極めて重要だ。

 毎日の多くの時間を費やす仕事で幸せを感じながら活躍することは、日常生活を充実させるだけでなく、キャリアの長期的な成功にもつながりやすく、豊かな人生を築く大切な要素といえる。同時に企業としても、自社の従業員が幸せを感じつつモチベーションを維持しながら高いパフォーマンスを発揮することは、持続的な成長の礎となる。

(写真はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 では、若手社会人が幸せに活躍するために、本人と企業は何をしたらいいのだろうか。

 今回、未来を生きる高校生〜若手社会人が、幸せに働く未来を描き、意欲を持って学びや行動へと向かうための羅針盤を届けることを目的として、「大人の学び」の専門家である立教大学の中原淳教授、教育に関する調査・研究を行っているベネッセ教育総合研究所、働く人や組織に関する調査・研究を行っているパーソル総合研究所の3者が共同で産学連携の研究プロジェクト(『ハタチからの「学びと幸せ」探究ラボ』 )を発足。25〜35歳の若手社会人の幸せにつながる学生時代の学びや社会人になってからの経験について探求を行った。

 そこで実施した「若年就業者のウェルビーイングと学びに関する定量調査」の結果から、幸せを感じながら活躍している若手社会人の特徴を見てみると、以下の5つの学び方が重要であることが分かった。

 詳しくはコラム『仕事で幸せを感じ活躍している若手社会人に見られる「5つの学び方」とは』で紹介している。これらの学び方を実践することで、若手社会人は幸せを感じながら活躍することができる。

幸せな活躍につながる「5つの学び方」

(1)人を巻き込んで学ぶ「ソーシャル・ラーニング」

(2)困難な事からこそ学ぶ「ラーニング・レジリエンス」

(3)いくつかの学びや経験を架橋する「ラーニング・ブリッジング」

(4)一貫してコツコツ学び続ける「ラーニング・グリット」

(5)デジタルツールを積極的に使う「ラーニング・デジタル」

 この幸せな活躍につながる5つの学び方はどのようにして身につけることができるのだろうか。本コラムでは、これらの学び方を習得するための仕事経験や社会人になってからの学習経験について詳しく掘り下げていきたい(※1)(※2)。

※1:本コラムは大卒の若手社会人を対象とした以下の調査結果に基づく。パーソル総合研究所・ベネッセ教育総合研究所・中原淳「若年就業者のウェルビーイングと学びに関する定量調査」
※2:具体的には、以下のように「幸せな活躍」を定義した。「はたらく幸せ実感」はパーソル総合研究所×慶應義塾大学 前野隆司研究室 「はたらく人の幸せに関する調査」より「はたらく幸せ実感」の項目を使用した。

幸せな活躍につながる5つの学び方

 まず、社会人になってからのどのような学習経験が上記の5つの学び方に影響を与えているかを見てみよう。幸せな活躍につながる学び方に関連する学習経験を見てみると、主体的な学習、つまり自分から学びに取り組む経験が、5つの学び方とポジティブに関連している。例えば、勉強会を主催する経験、資格取得のための学習、社会人になってからの大学院進学などが該当する。

 しかし、実際には、このような学びの経験を持つ人は2割以下にとどまっている(図1)。例えば、社内で勉強会を主催した経験がある人は9.1%で、勤務時間外に勉強会の主催・運営をしたことがある人はわずか3.7%しかいない。これらの学びの経験が幸せな活躍に関連していることを考えると、多くの人が主体的な学びに取り組むことで幸せな活躍を実現できる余地は大きい。

図1:5つの学び方とポジティブに関連する学習行動の経験率(出所:パーソル総合研究所・ベネッセ教育総合研究所・中原淳「若年就業者のウェルビーイングと学びに関する定量調査」)

 一方で、新入社員研修などの一般的な研修やOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)などの受動的な学びは、多くの人が経験しているものの、5つの学び方とポジティブな関連性は見られない(図2)。これらの一斉研修やOJTはスキル底上げのための基盤であるものの、幸せに活躍するためには、これだけでは不十分だといえる。受け身の学びだけではなく、積極的に学びに取り組むことが必要だ。

図2:5つの学び方と関連の見られない学習行動の経験率(出所:パーソル総合研究所・ベネッセ教育総合研究所・中原淳「若年就業者のウェルビーイングと学びに関する定量調査」)

 これらのデータからの示唆は、自社の従業員に幸せを感じながら活躍してほしい企業にとって、一般的な研修を提供するだけでは不足するということだ。

 従業員の幸せな活躍につながる主体的な学びを促進する効果的な方法としては、例えば、企業が社員同士で勉強会を開催することを奨励したり、資格取得や書籍購入、通信教育、語学学習をサポートするための費用補助を提供したり、選択式の研修プログラムを提供したりすることが考えられる。これらの取り組みにより、従業員が自ら主体的な学びに取り組みやすくなるだろう。

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