この記事は、パーソル総合研究所が2023年12月6 日に掲載した「どのような若手社員が上司からサポートを受けているのか」に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。
労働市場では人材不足が続いており(※1)、若手社員を定着させ、どのように育てていくのかは企業にとって喫緊の課題となっている。
近年、おおよそ1990年代半ば以降に生まれた「Z世代」がどのような価値観を持ち、どのように就労を意味づけているのかに関する議論が盛んになっているが(※2)、これは企業が「Z世代」を含む若手社員の特徴をつかむことで定着と育成に役立てようという切迫した思いからであろう。
※1:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」
※2:例えば、パーソルホールディングス株式会社による「【パーソルホールディングス】全国の就業者10万人を対象とした「はたらく定点調査」に見るZ世代の就労意識」(どちらも2023年11月6日アクセス)
本コラムで検討するのは、民間企業の20代・若手社員(正社員)が上司からどの程度仕事におけるサポートを受けているのかということである。上述した状況であれば、若手社員は上司から手厚いサポートを受けているはずだ。
しかし、それは本当であろうか。パーソル総合研究所が17年から実施してきた「働く10,000人の就業・成長定点調査」の結果(23年調査)から、このことを検証したい。
若手社員はどの程度上司から仕事におけるサポートを受けているのであろうか。
図1「上司に仕事上の悩みや不満を聞いてもらっている」、図2「仕事がスムーズに進捗するよう上司が支援してくれる」ともに、「あてはまる」と回答したのはおよそ4割にすぎない。多数(およそ6割)の若手社員は上司からのサポートを受けていないと感じていたり、サポートを受けているかどうかについて「どちらともいえない」と感じたりしている(※3)。
※3:この数値は若手社員の「認知」であることに注意する必要がある。実際は上司がサポートをしているにもかかわらず、若手社員はそう認知していない可能性もある。しかし、そうであったとすれば上司と若手社員の間に認識のズレがあるということになり、それもまた問題であろう。本コラムでは若手社員の認知は実態を反映しているものと解釈して議論を進める。
これらを企業規模と5種類に大別した業種別に見たのが図3である(※4)。
企業規模による違いはほとんどない。「上司に仕事上の悩みや不満を聞いてもらっている」では、金融業や保険業を含む「ビジネスサービス」だけが4割台、宿泊業や飲食サービス業を含む「消費者サービス」は2割台となっている。「仕事がスムーズに進捗するよう上司が支援してくれる」では、「ビジネスサービス」だけが5割、それ以外がほぼ同じ4割前半となっている。
ただ、企業規模同様に統計的に有意な差ではない。すなわち、企業規模や業種にかかわらず、上司からサポートを受けていない若手社員のほうが上司からサポートを受けている若手社員よりも多いということがひとまずいえる。
※4:分類については次の論文を参考にした。長松奈美江「サービス産業化がもたらす働き方の変化」(『日本労働研究雑誌』666、16年)、岩脇千裕「脱工業化社会と新規学卒者のキャリア」(『日本社会の変容と若者のキャリア形成』独立行政法人労働政策研究・研修機構、22年)
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