マーケティング・シンカ論

どうなるコールセンター「全自動化」の未来 AI活用の要所は?(3/4 ページ)

» 2024年01月19日 08時00分 公開
[北岡豪史ITmedia]

自動化の注意点 重要な二つのポイント

 顧客対応の自動化に大事なことが二つある。

 一つは「自社の顧客が、その対応に何を求めているのかを知ること」だ。クライアント企業から依頼を受けて、いざコンサルティングをしてみると、意外と顧客の声を正確に把握していないことが多い。

 例えば「我がA社のお客さまは電話対応を望んでいます」と決めつけてしまっているケースがある。なぜかと問うと「15年前にお得意さまから言われて、それからずっと電話対応できめ細かな対応をしてきているので……」なんてことも。これまでの顧客への先入観のせいで、現在のニーズを見失っているケースは多々ある。

 現在の顧客のニーズをつかむには、音声をテキスト化し、クラスタリング技術を使った「コールリーズン分析(チャットやメールの解析を含む)」が有効だ。コールリーズン分析では「どんな顧客、問い合わせ内容、問い合わせ件数があるのか?」といった基礎的なデータに加え、過去と比較して「どの手段で問い合わせが増えてきているのか? 電話やメールなど手段によって内容に変化はあるのか?」などを可視化することで顧客の傾向が見えてくる。

 顧客のニーズを知った上で自動化の実現にあたって、もう一つの大事なことは「顧客対応を型化しておくこと」だ。

 顧客対応の型化にあたり、筆者もよく使う手法として「ナレッジ・マネジメント」がある。具体的には、業務の内容やフローを可視化して業務を標準化し、形式知となっているマニュアルや応対に必要な参照資料、個々が持つ言葉では表現しにくい暗黙知や業務で得た知見を組織内に共有する。

 さらに、デジタル化していつでも参照可能にすることで、業務の効率化や応対の品質向上を図る。これによりベテランでも新人でも同じように顧客対応が可能になり、業務負担を軽減し、コンタクトセンター全体のスキルアップや効率化などにもつながる。

 ナレッジ化が実現できてさえいれば、定番の応対を選んで、チャットボットやボイスボット用の会話シナリオに落とし込むことも容易で、自動化する際の助けになる。

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