【炎上対応まとめ】その時、どうしたらよかった? パワハラ、性加害、寄付金着服……企業の対応を振り返る働き方の「今」を知る(3/8 ページ)

» 2024年02月14日 07時00分 公開
[新田龍ITmedia]

【3月】テーマパーク炎上「ノーコメント」対応で分かれた明暗

 3月には、全国的な知名度を誇る2つのテーマパークにおいて、相次いで物議を醸す問題が発覚。問題自体はさほど大騒ぎするほどのものでもなかったせいか、双方のテーマパークとも初手の対応が「ノーコメント」であった。しかし、それが原因で「物議を醸す」レベルだったところが「炎上」レベルに発展してしまったことがあった。

 1つは、神戸市にある「神戸アンパンマンこどもミュージアム&モール」で発覚した問題。同所に設置されている点字ブロックは、金属製の丸い鋲(びょう)でできているのだが、その鋲の中にひとつだけ「隠れアンパンマン」的な状態で、アンパンマンの顔が刻印されたものが混じっているのだ。

画像提供:ゲッティイメージズ

 それ自体は楽しい仕掛けとして来場者からも注目を集めており、設置当初はメディアでも「気がつくとうれしい、粋な小ネタ」などと好意的に報道されてもいた。しかし、数多く並ぶ鋲の中からアンパンマンの顔を見つけるためには、点字ブロックの上にしゃがみこんで目を凝らすしかない。よって施設に対しては設置当初から「アンパンマンの顔を探す子どもと、視覚障害者が衝突してしまう危険性があるのではないか」と指摘する声が寄せられていたという。

 そのような声を受け、ネットメディアが同所に対して「視覚障害当事者からの『危険だ』という意見についてどう考えるか」「安全面で施設としてどのような配慮をしているのか」といった取材をしたのだが、施設からの返答は「ご質問にはお答えしかねます」と「ノー回答」であった。

 もう1つの騒動は愛知県の「ジブリパーク」で発生した。来場者の男性が、パーク内に設置されている女性キャラクター像の胸を両手で触ったり、スカート内を撮影したりする様子をSNSに投稿。それらが「不適切行為だ」「性犯罪を連想させ不快。周囲の観客にも迷惑がかかる」などと批判され、ネット上に一挙に拡散。炎上に至ったものだ。

 ここまでであればジブリパーク側は被害者でしかないはずだが、パーク側が批判される展開となってしまったのは、不適切写真の拡散について各メディアから取材を受けたパーク側の回答が「今回の件に関しまして、ノーコメントとさせていただきます」という門前払い状態だったためである。

 この対応によってネット上では「迷惑行為に対しては、施設側としてきちんと注意勧告してほしい」「ジブリがこれまで創り上げてきた世界観が壊されているのに、それを守ろうとしないのか?」といった意見が噴出。その後大村秀章愛知県知事が「何らかの措置は取らなければいけないのではないか」とコメントするまでに発展し、批判の矛先がパーク側に向く事態となってしまった。

 一部メディアでは、この2カ所のテーマパークにおける「ノーコメント」対応をひとまとめにしたうえで「だんまり姿勢に非難の声」といった論調で批判。ネットユーザーの「失望感を抱いた」「残念な気持ちになる」といった声を紹介する報道へとつながってしまった。

 結果として、当初の想定以上に批判の声が大きくなってしまったからだろうか、「アンパンマンこどもミュージアム」の炎上発生から約10日後、運営会社はノーコメントから一転して、次のコメントを発表した。

 仙台および神戸のアンパンマンこどもミュージアムでは、施設内に一部設置しておりました「点字ブロック」内のアンパンマンの顔を刻印した点状突起をすべて周囲と同様、無地の点状突起に交換いたしました。この度いただいたさまざまなご意見を真摯(しんし)に受け止め、引き続き安心安全な施設運営に努めてまいります。

 一方、ジブリパーク側はノーコメントを貫き続けた。結果として同月末、最初に不適切写真を投稿した男性3人が名乗り出て、公園を管理する愛知県側に対して「悪ふざけの度を超えた写真を撮って、不快な思いをさせてしまった」「後悔と反省で申し訳ない気持ち」と謝罪。大村知事も「真摯に受けとめたい」として、法的措置などは取らない考えを示した。

 確かにジブリパークのケースにおいては、実際に性犯罪が発生しているわけでもなく、むしろパーク側はイメージダウンの被害者側の立場であった。にもかかわらず「ジブリパークは自敷地内でハメを外した人間を許容するな」と少々過剰気味な要求がなされるという点においては、ノーコメントを貫く形で問題なかったのかもしれない。

 実際、当初報道では「イメージダウンは火を見るより明らか」「悪い話題が来場者数減少に響かなければいいのだが……」などと書かれていたジブリパークであるが、実際の来場者は開園時の想定を3割上回る年間135万人のペースで好調に推移。騒動から半年以上を経過した現在では、もう炎上があったことさえ忘れている人が多いのではないだろうか。

 自組織に非がない、言いがかりに近いクレームを起因とした炎上の場合は、不必要に騒がず、反論もせず、泰然自若の構えで「当社には何ら問題はないと認識している」として屈しなければよいだろう。騒いでいる人たちがお客さまでさえないケースも多いからだ。

 自組織の不祥事で批判が寄せられた場合も、それに対して沈黙を貫けば、いずれメディア側でも騒ぐ材料がなくなるため、短期的には、目の前の炎上から一時的に免れられるように見えるかもしれない。しかし、不祥事に至った根本的な原因が解消されたわけではないのだ。いずれその原因を発端としたさらに大きな問題が発生して批判は再燃し、そこからの信頼回復には高いハードルが待ち受けることになるだろう。自組織側に非があるトラブル事案は、初期段階でキッチリと謝罪し、問題の原因を解消しておくに尽きる。

 自社で同様の事態が発生した場合どのように対処すべきか、ぜひ本事案を反面教師として適切に対処いただけることを祈念している。

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