【炎上対応まとめ】その時、どうしたらよかった? パワハラ、性加害、寄付金着服……企業の対応を振り返る働き方の「今」を知る(7/8 ページ)

» 2024年02月14日 07時00分 公開
[新田龍ITmedia]

【12月】日本海テレビの「絶対に手を付けてはいけないお金」事件

 日本海テレビジョン放送(以下、日本海テレビ)は、鳥取市に本社を置く、日本テレビ系列の放送局だ。同局では46年の歴史を有する看板チャリティー番組「24時間テレビ」が毎年放送されている。

 11月末、同局の幹部社員が、24時間テレビに寄せられた寄付や会社の資金などの一部、合わせて1118万円あまりを約10年間にわたって着服していたとして、当該社員を懲戒解雇としたとのニュースが飛び込んできた。日本海テレビは「責任を持って保管すべき浄財が着服されるのを10年間見落としていた」と、寄付者や番組関係者に謝罪し、田口会長が辞任、西嶌社長が給与全額を3カ月返上すると発表した。

画像提供:ゲッティイメージズ

 当該社員は、番組に寄せられ社内に保管されていた寄付金から、周囲の目を盗んで紙幣を抜き取る手口で、のべ264万円あまりを着服。また会社資金の一部も、データ改竄(かいざん)などで853万円あまりを着服していたことが発覚している。着服が始まった2014年に元社員は経理部次長、その後は経理部長を務めており、寄付金が保管されている社内の鍵付きの部屋と金庫を開けられる立場にあったという。

 元社員は動機について「最初は親族のためにお金を用立てる必要があった」としつつ、その後は飲食や遊興費に使ったと見られている。税務調査による発覚を恐れ、11月初旬に元社員自らが会社に申告し、事態が発覚。会社は鳥取県警に被害届を出した上で、今後刑事告発も検討しているという。なお元社員はこれまでに448万円あまりを返還しており、残りの金額も弁済するとしている。そして着服された寄付金についても、日本海テレビが責任を持ってチャリティー委員会に届けるとのことだ。

 世の中に「手を付けてはいけないお金」は多々あれども、その中でも最も使ってはいけないお金である寄付金を着服し、私的な遊興に流用したという本件。これは昨今の並居る不祥事の中でも、費消された金額との割合で考えれば、最も組織の評判を下げた事案として歴史に刻まれるものとなるだろう。実際、世論の反応も「単なる着服では済まされない。善意への裏切りであり、非常に悪質」「困っている人たちに対する寄付金が、幹部の私腹を肥やすために使われたなど許せない。もう募金するのは止めた」など極めて辛辣だ。

 いずれにせよ、現金の形で寄付金が寄せられ、領収書を発行するわけでもなく、それが関係者の手の届く場所に保管され、寄付先にきちんと入金できたか検証する必要もない状態が長年放置されていたことは確実である。今回たまたま税務調査があることをきっかけに発覚しただけに過ぎず、「これまで他の局でも、日常的に着服が行われていたのでは?」と勘繰られても仕方ないだろう。これは他局にも飛び火するばかりではなく、そもそも海外ではノーギャラ出演が当たり前とされるチャリティー番組において、多くのスポンサーが参画し、出演者には多額のギャラが飛び交うバラエティ番組のようになっている24時間テレビそのものの存在意義にも疑念が呈される事態となりかねない。

 テレビ局として他所のスキャンダルに対して「氷山の一角だ」「疑惑はさらに深まった」などと批判してきた矛先が、自分たちに向いた場合にどのように対処するのか。日本海テレビの姿勢が問われている。

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