【炎上対応まとめ】その時、どうしたらよかった? パワハラ、性加害、寄付金着服……企業の対応を振り返る働き方の「今」を知る(4/8 ページ)

» 2024年02月14日 07時00分 公開
[新田龍ITmedia]

【4月】広島マツダ「障害者マネ動画」の謝罪対応でさらに炎上

 4月下旬、自動車ディーラー「広島マツダ」の従業員が、電動車椅子に乗って障害者のまねをして遊ぶ様子が記録された動画がSNS上で拡散し、炎上した。

 問題の動画は「MAZDA」のロゴがついた制服を着た男性が、障害者のまねをするかのように、唇と舌を突き出しながら頭を傾けて電動車椅子を操作し、動画撮影者が「『もう一回、もう一回』と笑いながら再度まねることを促し、さらに笑い声をあげる様子が記録された悪趣味なものであったため、ネット上で「できれば見たくなかった。非常に残念」「マツダ車に乗り換えようと思ったけど、コレ見てやめました」「マツダの企業コンプライアンスはどうなってるんだ」などと厳しい批判を浴びることとなった。

 止まらぬ批判を受けた広島マツダは4月30日「ご覧になられた皆様に大変不快な思いをさせてしまったこと、またお客様ならびに関係各位には、ご心配ご迷惑をおかけしておりますこと、深くお詫び申し上げます」と謝罪する文章を発表した。しかし、再発防止を誓ったこの謝罪文が、さらなる批判を招くことになる。

 批判されたのは、文章中にある「本動画を撮影しSNSに投稿した従業員、動画に映っている従業員、および撮影時に周囲にいた従業員に対して事実確認を行ったところ、決して障害者を揶揄(やゆ)するつもりはなかったと申しております」との釈明箇所だ。

広島マツダのリリース文より

 明らかに障害者のまねをして、周囲にいる人間も笑っている様子が明確に記録されており、どう見ても揶揄している動画を撮影しておいて「決して障害者を揶揄するつもりはなかった」との言い訳はあまりに白々しい。では、何をもって笑っていたのか説明する必要があるだろう。

 筆者は常々、炎上対応の場面において「誤解を招いてしまった」「そんな意図はなかった」といった釈明は絶対NGであると釘をさしている。「誤解されている」と感じているのはあくまで自分たち側であり、問題視している側は当然「誤解」とは思っていない。また、「揶揄するつもりではなかった」などと言い訳したところで、多くの人が「揶揄だ」と感じている以上、情報の受け手に対して「あなたは間違っている」と言っているのも同然であり、炎上は鎮火どころか加速することになるだろう。

 このような表面的な釈明によって、かえって「不誠実な会社だ」との印象を抱かせてしまうことになり、そのようなスタンスの組織がする「厳重注意」や「再発防止に向けた取り組み」など、全くもって信頼できないと、全てが裏目に伝わってしまうハメになってしまった。

 この件のような「悪ふざけ」的な投稿による炎上の場合、投稿そのものはモラルやコンプライアンス面では問題があっても、決して法に触れているというわけではない。従って、場合によっては経営陣の中で「そこまで深く頭を下げることもないのではないか」といった、一種の軽視が垣間見えることがある。この場合、それが「揶揄するつもりはなかった」という、一種の逃げとも捉えられる余計な釈明につながってしまったものと思われる。

 このような場合、広島マツダとしては「人権意識が欠如しており、断じて容赦できない行為が行われてしまったこと、誠に申し訳ございませんでした。関係者には厳正な処分を下しました」といった形で、言い訳無用で率直に謝罪し、逃げ道を作らず、社内処分まで言及すべきであった。そこまでの徹底した姿勢を示せれば、世論も納得したことと思えてならない。

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