相次ぐ不正問題でゆれるトヨタグループトップの豊田章男会長は1月30日、トヨタグループ発祥の地「トヨタ産業記念館」で会見し、一連の不祥事を謝罪した上で「責任者として、グループの変革をリードする」との決意を示しました。
豊田会長のこの謝罪会見を評価する声も多くあった一方で、一部の識者からは「謝罪会見なのに、グループビジョン説明会とか言っちゃうから変われない」「創業者に立ち返るのもいいけど、その前に今の状況どうにかすべき」「謝罪の体をなしてない印象を受ける」といった批判も少なくありませんでした。
確かに、企業の不正が発覚したときに行われるトップの記者会見とは、少々空気感が違いましたよね。そもそもグループ会社の不正を生んだのは、トヨタの経営に問題があったからなのは明らかです。豊田会長の「私が今やるべきことは、グループとしてのビジョンを掲げることだと考えた」とのコメントに違和感を抱くのは、ごく自然な心の動きかもしれません。
しかし一方で、豊田会長が送ったメッセージには、不正を生まない企業になるための「極めて重要なメッセージ」も含まれていました。
「次世代が迷った時に立ち戻る場所を作ること」――。
この発言は私が本コラムでも触れてきた、「会社アイデンティティ」であり、「ミッション」です(詳細は後述します)。
この記事では、トヨタグループの不正を振り返りながら「不正が生まれるわけ」について、あれこれ考えてみます。
まずはトヨタグループの不正問題のおさらいから。
「短期開発の強力なプレッシャーの中で追い込まれた従業員が不正行為に及んだものであり、不正行為に関与した従業員は、経営の犠牲になったといえ、強く非難することはできない。従って、本件問題でまずもって責められるべきは、不正行為をした現場の従業員ではなく、ダイハツの経営幹部である」(調査報告書、p114)。
このようにトヨタグループの不正の特徴は、会社側が「数字」だけを見て、「人の限界」を越える要求をし続けたことにあります。
奇しくも、豊田会長は記者会見で「主権を現場、商品に戻す」と強調していました。ダイハツ工業の第三者委員会が強く訴えた「責められるべきは、不正行為をした現場の従業員ではなく、ダイハツの経営幹部である」とのメッセージは十分伝わっているし、何よりもトヨタ会長自身が、世界のトヨタの階層最上階に立って見えたのが「経営幹部と現場の壁」だったのでしょう。
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