組織が大きくなればなるほど、現場の声は届かなくなりがちです。その距離を縮められる唯一の存在が「トップ」です。
私はこれまで全国津々浦々1000社以上の企業を講演や取材で訪問し、1000人以上のトップとお会いしてきましたが、いい経営をしているトップには「現場」を忘れないルーティンがありました。
ある会社のトップは「先代の頃から管理職とは朝メシを一緒に食べるんだよね」と話し、ある長寿企業のトップは「うちは全国に支店があるんだけどね、ふら〜っと行くの。ふらっと行って、社員と酒を飲むのが一番楽しい」と笑い、ある大企業の社長は「朝、工場を歩いて回るんだよ。健康にいいよ。工場は結構広いからね」と微笑みました。
どの社長も人間的な誠実さを感じさせる人たちで、どの社長にも、つい「社長、実は……」と愚痴をこぼしたくなる暖かさがあった。そして、そういった会社に共通して根付いていたのが、前述した「会社アイデンティティ」です。
創業者の思い=会社アイデンティティは、いわば会社の土台です。
企業が存続し続けるには、明確な将来へのビジョンが必要だと誰もが思います。しかし、過去と今があって初めて輝かしい「将来」につながります。会社を支えてきた「名もなき英雄」たちが、腹の底から真面目に目の前の仕事に向き合ったからこそ「今」がある。その基本を決して忘れてはいけないのです。
会社とは「社会のリソース」であり、会社とは社会全体のもの。「わが社が社会に存在する意義=会社アイデンティティ」があってこそ会社は成立します。それは経営者に、組織の利害関係者であるオーナーと従業員、供給業者、中間取引先、製品やサービスの最終顧客、メディアなど、全てを一つの共同体と考える意識があることと同義です。
分かりやすくいえば「売り手よし、買い手よし、世間よし」。日本経済の発展に大きく貢献した江戸時代の近江商人の精神、「三方よし」です。 本当にこの頃の商売人=経営者はうまいこと言いますよね。
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