宇都宮のライトライン、東側の成功と西側延伸が必要な理由杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/7 ページ)

» 2024年02月24日 05時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 栃木県宇都宮市と隣接する芳賀町(はがまち)にまたがるLRT(ライトレールトランジット、軽量軌道交通)、「ライトライン」が好調だ。2023年8月26日に開業して以来、5カ月で約190万人が利用した。これは当初予想の約1.2倍になるという。24年4月1日のダイヤ改正で所要時間短縮、通勤通学時間帯の増便、最混雑時間帯の快速運転を実施する予定だ。さらに宇都宮駅西口以西の延伸計画も動き出す。実際に訪れてみると、ライトラインの走る街として活気がみなぎっているように見えた。宇都宮市の格が上がった気がする。

 ライトラインの現在の運行区間は「宇都宮駅東口停留場」と「芳賀・高根沢工業団地停留場」を結ぶ14.6キロメートルだ。市街地などほとんどの区間で道路上に軌道を設置しており、これを専門的には「併用軌道」という。道路と併用する軌道という意味で、一般的には「路面電車」のほうが通じやすい。

 かつて東京や大阪でも広大な路線網を持っていた路面電車は、自動車の普及によって邪魔者扱いされて次々に廃止されていった。いまでは路面電車がある都市の方が珍しく、路面電車そのものが観光資源になっている。そんな状況のなかで、ライトラインは75年ぶりに誕生した新規開業の路面電車となった。

 全車両が流線型の新型低床電車で統一され、デザインは「雷都・宇都宮」をイメージする稲妻の黄色。この意匠は停留場なども統一されている。料金収受は基本的に交通系ICカードを使い、すべての扉で乗降できる。昭和の懐かしさを残す路面電車とは一線を画し、欧州の街を走るような姿。「未来の乗りもの」の具現化である。実際に乗ってみれば「ライトライン」という名の新しい乗りものだと感じるはずだ。

宇都宮のライトレール、愛称は「ライトライン」(筆者撮影)
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