宇都宮のライトライン、東側の成功と西側延伸が必要な理由杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/7 ページ)

» 2024年02月24日 05時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

懸念は解決、ダイヤ改正でスピードアップ

 乗客数が順調となれば、建設資金の回収計画も順調ということだ。このほかにライトラインで懸念されていたことは主に2つあった。

 1つは新たに併用軌道がつくられることに対する自動車交通の混乱だ。しかし警察署や道路管理者との連携が徹底しており、路面電車と自動車で右折信号が重ならない。郊外では電車の通過に連動する信号機が設置されている。これらは視察に訪れた路面電車のある自治体の人々がうらやましがっていると聞く。残念ながら電車と自動車の接触事故は起きているけれども、自動車側が信号や軌道の境界線を正しく認識すれば防げるものだった。

 もう1つは「すべての扉で乗降可能」という乗車方法だ。一般に路面電車や地方のバスは「後ろ乗り前降り」だ。乗車時に整理券を取って、降車時に運転士のそばの料金箱に入れる。交通系ICカードによって整理券不要になった路線もある。ところがライトラインは「交通系ICカードに限りすべての扉で乗降可能」となった。この方式が浸透するか。従来の整理券と現金の利用者が多ければダイヤが乱れることも予想される。

 しかし私が観察したところ、定期券含めて交通系ICカードの利用者が圧倒的に多くスムーズに乗降していた。わずかながら現金利用者もいたけれど、運転士が信号や停留場の発車時刻待ちの時に「いまのうちに両替をお願いします」と呼びかけており、降車で詰まることはなかった。

 現在の宇都宮駅東口〜芳賀・高根沢工業団地間の所要時間は48分だ。これは現金収受の遅延をあらかじめ想定したダイヤだった。現在は乗り方の定着やICカードの利用率の増加によって、余裕時間を短縮できた。そこで4月1日のダイヤ改正で所要時間を44分に短縮する。快速運転の所要時間は約38分を見込んでいるという。貸切運転の要望などに応えるため、26年度までに2編成を追加して19編成とする。

交通系ICカード利用者はすべての扉で乗降できる。現金用整理券は停留場の発券機で発行し、運賃箱が記載されたQRコードを読み取って運賃を表示する(筆者撮影)

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