マーケティング・シンカ論

「顧客の声」から何を学べるか 企業活動を変えるVOC活用の全て(3/4 ページ)

» 2024年03月22日 09時00分 公開
[北岡豪史ITmedia]

VOC活用でコンタクトセンターは“変わる” 成功事例も

 VOC活用の本来の目的は、本音が詰まった顧客の生の声から本質的なニーズを把握し、商品開発や品質管理に役立てることである。顧客心理や行動理由を、マーケティングのみならずコンタクトセンター運用でも活用すれば、さまざまなプラスの効果が生まれる。

 顧客が何を知りたいかをもとにFAQを作れば、自己解決の促進や工数の削減につながり、工夫すればチャットボットの解決率も向上する。顧客の不満が分かれば、オペレーターを支援するナレッジも整備できるし、応対品質も向上する。顧客視点になることのメリットは非常に大きい。

 かつては、VOCを活用するには通話録音データから人による文字起こしが必要で、かなりの工数がかかった。CRMシステムで応対履歴のテキストを代用するとコストの削減はできるものの、生のやりとりが可視化されない。また、分析には人手も時間も必要になり、精度も悪い。同じ視点の繰り返し分析でさえ、再現性がないこともある。

 その状況を変えたサービスが音声認識テキストマイニングである。音声認識精度は向上し、話者ごとに分離、個別チューニングも可能。導入コストも安価である。音声基盤の一部として導入し、通話録音の音声データをもとに、都度サービスとしてテキスト化することも可能だ。

 さらに、膨大なテキストデータを分析するために、力を発揮するのがテキストマイニングツールだ。自然言語処理手法を用いて、文章や単語の流れを分類し、話題をまとめ、さまざまなレベルでの定量・定性・相関などを見つけて可視化する。トレンドを見たり、前後のやりとりを深掘りしたり、特定キーワードの監視、FAQ作成も支援してくれる。

 単純作業の分析は効率化され、専門家はさまざまなニーズに対応するための高度な分析に集中できる。また、一度作った分析テンプレートを繰り返し利用できるため、専門家だけでなく、現場主導の分析も可能だ。

 あるコンタクトセンターでは、音声認識システムの導入をきっかけに、顧客の商品購入理由、継続理由ついてVOCを収集した。専門家がテキストマイニングで分析し、テンプレートを現場主導で継続的に運用しながら、得られた潜在ニーズを開発部門やマーケティング部門に連携して効果を上げていった。

 テーマは徐々に広がり、次は解約理由にフォーカスして改善点を深掘りした。顧客の声を分析した結果、商品の説明が分かりにくいため他社との優位性が伝わっていないこと、顧客は「価格が高い」と感じていることの2点が分かった。

 それに対応するスクリプトを整備、詳細説明のナレッジを準備。あわせて利用できるキャンペーンの紹介や、簡単なやりとりはFAQを作って公開し自己解決を促進していくことで、解約希望者を削減することに成功した。VOCの活用をきっかけに、マーケティング、コンタクトセンター双方が高度化して、大きな効果を生み出していけるようになる。

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