2000年代にアニメバブルが一服した後、10年代中頃に放送されたアニメの多くは1クールの放送、もしくは1クールずつに分けた分割2クールの放送であった。こうした傾向に変化をもたらしたのが、動画配信サービスの台頭、それに伴うアニメ産業全体の成長である。
特に北米や欧州の視聴者獲得を視野に入れた場合、それらの地域の視聴習慣や事業者のビジネス慣習に合わせた形態であることが望ましく、それにはある程度多くの話数を確保する必要がある。同時に、品質も高いものが求められるようになった。
一方で、ロングランタイトルのように4クール分を作ろうとすると体制整備が難しく、また、連載中の原作に追い付いてしまうリスクもある。このような背景から10年代中盤以降、ビジネス上適切なサイズとして連続2クールで完結する作品、またはファンをつかむための1期を連続2クールでスタートし、2期目以降は体制やビジネス環境・原作の展開に合わせて1クールも交えて対応する形態が増え始めている。
こうしたやり方は『進撃の巨人』や『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『東京リベンジャーズ』『転生したらスライムだった件』などがとっている。
この期間、アニメ産業においては(1)日本市場で人気のある原作をアニメ化する、(2)アニメが配信されヒットする、(3)アニメの原作が海外で売れる、(4)次期アニメ配信もヒットする――という好循環が生まれ、出版業界にもプラスの影響をもたらしている。
端的に述べると、ビジネス上満たさなければならない質と量、それに伴うリスク、また視聴するファンの熱量維持のバランスを現状最も整える解が連続2クール放送で開始することと考えられる。
なお、ファンの熱量獲得についてはいわゆる「1話切り」を防ぐため、特に初回放送・配信の重要度が増している。多くの作品は初回と2回めの放送・配信で1つの話を行うが、これはファンの熱量が上がりきらず、導入部に相当する初回で切られる危険性がある。
これを回避するため、初回のみ1時間枠とする、あるいは2話分を放送・配信するといった取り組みが見られる。顕著な例としては『薬屋のひとりごと』があり、初回に3話分を連続放送する試みを行った。このような取り組みを行ったことや、そもそもの原作小説の人気もあり、本アニメは現クールを代表する人気作品となっているのだ(後編に続く)。
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