新テーマパーク「イマーシブ・フォート東京」ってそんなにすごいの? 1万円でも高くないと感じた「没入体験」に迫る(3/6 ページ)

» 2024年03月25日 05時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]

短期間・低投資のテーマパーク開発

 ヴィーナスフォートの営業が終了したのが22年3月で、イマーシブ・フォート東京としてオープンしたのが24年3月。わずか2年でまったく異なる施設としてオープンできたのはなぜでしょうか。そのカラクリは、資金調達にあります。

 刀は22年9月、いわゆる「クールジャパン機構」から80億円の資金調達を実施したと発表しました。その他、累計で220億円の調達を行っており、テーマパーク開発に投資する資金のメドをつけています。クールジャパンから資金調達を受けているということは、日本式のテーマパークの世界展開を視野に入れていることも考えられます。

 完全没入体験のためには、施設環境やデザインが、ある程度のクオリティーを伴って強固な世界観を実現している必要があります。その点、ヴィーナスフォートは中世ヨーロッパの街並みを再現した内装を作り上げていました。

 当時、ヴィーナスフォートの内装イメージのお手本になったのは米・ラスベガスの有名ホテル「シーザーズ・パレス」内にあるショッピングモール「フォーラム・ショップス」でした。1990年代、フォーラム・ショップスは非常に集客力があり、売り上げも大きな屋内型モールとして有名でした。

サイモンプロパティーズ フォーラム・ショップス(出所:同施設公式Webサイト)

 その内装デザインを手掛けていた米国企業に内装を依頼し、ヴィーナスフォートの代名詞でもある、天井の幻想的な演出も、米国のテーマパーク演出を手掛ける企業と提携。結果として総事業費200億円という大きな投資により生まれたのが、ヴィーナスフォートの世界観です。

 つまり、ヴィーナスフォートの内装は、没入体験をウリにしたいイマーシブ・フォート東京としては十分に利用価値があり、新規投資を極力抑えて利活用できる空間だと判断したわけです。結果的に、建物を取り壊すことなく、新たな施設に転用したことで期間も費用も圧縮できました。ディベロッパーを含めて関係者の負担するコストも削減でき、さまざまな承認を得やすかったことも短期間での開発となった要因ではないかと推察されます。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.