安全運転度合いをスコアとして見せることは、アプリを通じた接触頻度の増大にとどまらず、実際に安全運転を促進することも分かってきた。テレマ保険では、安全運転レベルを数値化した「安全運転スコア」だけでなく、運転状況を振り返られる「運転レポート」を提供。また運転技能向上のトレーニング手段として「脳トレ」シリーズで知られる東北大学の川島隆太教授と共同開発した「脳体操アプリ」も提供している。
「安全運転のレポートをしっかり閲覧する人は、そうでない人に比べ事故頻度が21%低い」と若園氏は話す。さらに、テレマ保険に入ることで事故が減るという効果もある。通常の自動車保険に比べ、テレマ保険は事故頻度の改善率が18%高いのだという。
脳体操アプリについても、その効果が実際のクルマの運転データから検証された。脳体操アプリ利用者のほうが安全運転スコアが高く、それは70代以上で顕著だと安仲直紀氏(デジタルマーケティンググループ担当課長)は話す。さらにアプリへのアクセス回数が増えるほど、安全運転につながる傾向も分かった。
「このメニューが急ブレーキ対策によく効く、これが急発進によく効くということが分かってきた。その人ごとの改善ポイントに合わせて、AIが自動判定して脳体操のメニューを配信することも始めている」(若園氏)
今までバラバラで管理していたアプリの統合――これを実現するのは簡単ではなかった。
同社は、2023年4月に照会応答業務の改革に向けて部門横断型DX組織「デジタル照会センター」を設立するなどのDX化に向けた取り組みを行っている。しかし保険商品やアプリに関してはそれぞれの部署が管轄しており、横断してDXに取り組む部署はない。
安仲氏は、今回のプロジェクトを「“マンションの管理組合”のようなものだった」と振り返る。
「今回のアプリは、分譲マンションを作るようなものだと社内で話していた。アプリは共用部で、サービスは区分所有部分。共用部は各部門の代表が集まった管理組合で決めていく」
関係者は社内で50人以上、パートナー企業も国内外で5〜6社あり、コントロールが非常に大変だった。さらに、計画から実行まで9カ月しかなく、スピーディーな対応が求められた。
顧客が触れるアプリ自体だけでなく、裏側のサーバ部分の調整にも難航した。当初、各サービスのサーバを統合するプランもあったが、時間的に難しかった。もともと既存のアプリはサーバにAPIでアクセスしていたわけではないため、既存のサーバにAPIでアクセスできる基盤を用意したり、Web型のサービスに切り替えたりといった取り組みを行ったという。ユーザー認証も全てが統合されているわけではなく、アプリ側から複数のサービスにログインできる仕組みを用意した。
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