ここからは、ハピラインふくい以外の北陸・第三セクター鉄道の事情を見ていこう。
15年の新幹線延伸時に北陸本線・倶利伽羅駅〜金沢駅間の移管を受けて開業した「IRいしかわ鉄道」は、コロナ禍の20〜21年度以外で黒字をキープし、「第三セクター鉄道の優等生」として知られてきた。
業績が好調だった要因は、同社が持つ路線の環境の良さにあった、富山県〜金沢都市圏への通勤・通学の多さに支えられつつ、金沢駅〜津端駅間にJR七尾線の普通列車・特急列車が乗り入れることで、上乗せ運賃の運賃をしっかりと獲れたのだ。
開業前には赤字経営が見込まれており、隣県のあいの風とやま鉄道との直通列車を維持しつつ、ファンクラブ会員の獲得などで、想定外に利用実績を伸ばしたことが、黒字キープの最も大きな要因だろう。
しかし、北陸新幹線・金沢駅〜敦賀駅延伸とともに金沢駅〜大聖寺駅間の移管を受けた区間の輸送密度は、倶利伽羅駅〜金沢駅の7割程度(輸送密度は約9200。平成26年度推計値)。IRいしかわ鉄道は、今度こそ10年間で87億円程度の赤字転落が予想されている
幸いにして、今回の移管前にJR西日本から高架下の用地を授受され、テナント収入を得ることができる(10年間でプラス34億円の収入となる見込み)。ただそれでも経営環境は厳しい。
IRいしかわ鉄道はこれまで運賃値上げを最低限にとどめていたが、24年3月に普通運賃の平均14%引き上げを申請。この水準を29年まで保つ意向を示している。しかし、もし赤字がかさむようであれば、29年以降の大幅な値上げも必要となってくるだろう。
同社の課題は「堅実な利用促進による支持を保ちながら、将来的な値上げに納得してもらえるプロセス作り」といったところだろうか。
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