ハピラインふくいの赤字を埋めるために準備されたのが、福井県や沿線市町村によって作られた約70億円の経営安定基金だ。この基金をなるだけ取り崩さず、金利・運用益で今後の赤字を埋めていくことになる。
幸いにして24年現在、植田和男・日本銀行総裁が17年ぶりのマイナス金利解除・利上げの検討を始めている。過信は禁物だが、これまで低金利による運用益低下で効力を発揮しなかったJR北海道・JR四国などの基金よりは、安定した運用益が見込めるかもしれない。
JR西日本から約70億円で引き継いだ鉄道設備のなかには、空きスペースや店舗を展開できそうな空間も多くある。今後は広告出稿やテナント入居などで、こういった空間を少しでもマネタイズするノウハウが必要となってくるだろう。
開業初日に気になったのが、全体的な「商売っ気の薄さ」だ。
車内の広告は自社のPRで埋め尽くされ、まだ一般的な広告を取りにいく営業部隊が動いていないことを感じさせた。
もっとも、15年に発足したあいの風とやま鉄道、えちごトキめき鉄道でも似たような状態(広告自体がほぼなかったので、もっとひどい)だったため、副業収入も含めて開業当時からロケットスタートさせるような感覚は、半官半民の第三セクター鉄道にはないのだろう。
せっかくの開業フィーバーなのだから、「しばらく需要が激増します! 今スポット広告のご契約を!」と営業活動を行うような感覚がないものかなぁ……と、第三セクター鉄道の開業を見に行くたびに「もう俺に飛び込み営業させろよ!」(注:筆者はもともと営業マン)とすら思う。
また、福井駅には券売機が1台しかない(スペースは6台分あるが、JRのものであるため閉鎖。開業2日後に1台増設)。丸岡駅・森田駅などで券売機トラブルがあり、切符の購入・精算は長蛇の列。開業日の特需を逃すだけでなく、後味の悪さも残った。
こちらは「ハピラインふくい開業記念・鉄道3社共通1日フリーきっぷ」などのフリー切符を購入すれば、記念になる上に行列に並ばなくていい。せめて臨時売店や購入の案内所を設けて「これを買ったら記念になるし、このあとも乗り放題ですよ!」などと積極駅に声をかけていれば、行列に並ぶ利用客の心象も、売り上げも違ったかもしれない。
杉本達治・福井県知事(ハピラインふくい会長職を兼任)によると、北陸新幹線・ハピラインふくい開業日に飛行した「ブルーインパルス」見たさの乗客が想定外に多かったようで、切符の販売体制や車両数について「大変申し訳なかったと思っている」と陳謝している。
こういったイベント需要は毎週続くものではないにせよ、ハピラインふくいにとっては、またとない稼ぎ時であったはず。経営環境の厳しさが見込まれるのであれば、機を見て臨時増便を行い、隙あらばグッズを売ろうとする銚子電鉄の機動力・良い意味でのがめつさを少しは見習い、支持されて、かつ稼げる企業体質を作ることを心掛けてもよいのではないか。
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