バーコード、RFID、画像認識などの自動認識技術を活用して、「自動認識ソリューション」を提供するサトーホールディングス(以下、サトーHD)。同社では、従業員が記名式で社長や経営層に提案・報告をする制度「三行提報」(以下:提報)を45年以上続けている。
この制度の特徴は、従業員が毎日、3行(100〜150字程度)の短文で提報を書くことにある。
驚くべきは、毎日の提出が求められるにもかかわらず、提出率が99%を超えている点だ。なぜ、そこまで高い提出率を維持できるのか。また、提報は経営にどのような影響を与えているのか。この制度に一から携わってきたサトーHD秘書部部長渡辺均氏に話を聞いた。
三行提報は、従業員が日々感じている問題点や改善案を、3行にまとめて経営層に直接提出する制度だ。提案と報告の意味を込めて“提報”と呼んでいるという。
この取り組みは、48年ほど前に創業者である佐藤陽氏が、会社全体の状況を把握するため、幹部社員に日報を出させたことが始まりである。急成長する会社の現場で何が起こっているのか、把握したいと考えたことがきっかけだった。ただ、枚数が増えると読む負担が増すため、やがて3行で提出を求めるようになったという。以来、提報は同社の文化として根付くこととなった。
「社員にとっては大したことないと感じることが、経営層にとっては大きい話題というケースは多い。経営層には日々社外や取引先などからさまざまな情報が入ってくる。そうした情報に、提報で得られる小さな情報がつながり、経営の意思決定に影響を与える」と渡辺氏は話す。
日々2000通ほど集まる提報は、専用のシステムを用いて一元管理され、秘書部を中心としたスクリーニングメンバーが内容を精査。数十通まで絞り込み、経営層に伝えている。
単なる目安箱にならないよう記名式を採用。報告者は一人称で自分がどうしたいかという要求を書くのではなく、具体的な改善策まで明記することを基本ルールとする。
記載される内容は業務から働き方に関することまで幅広く、例えばペーパーレス化を進めるための書類電子化の提案や、社内の冷蔵庫管理を改善するアイデアなど多岐にわたる。
渡辺氏は「社員は毎日ネタを探すため、問題意識を持ち続けることになり、考える力や文章力の向上、経営参画意識の向上につながる」とし、経営層と社員、どちらにも効果がある取り組みであることを強調した。
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