攻める総務

自然光に観葉植物……「自然を取り入れたオフィス」がはやる、納得の理由「総務」から会社を変える(2/2 ページ)

» 2024年04月25日 07時00分 公開
[豊田健一ITmedia]
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 まず検討したいのは、自然光の採り込みだ。オフィス内の蛍光灯の明かりではなく、窓から降り注ぐ自然光を体感できるオフィスが良い、というのだ。つまり、窓際のスペースである。

 島形のオフィスが主流だった時代、窓際を陣取るのは部門長だった。しかし、今多くのオフィスで見られるのは、ハイカウンターを設置してのソロワークスペース、あるいはミーティングスペースだ。成果を上げるためのスペースとして位置付けられている。

 採光のみならず、オフィス内の明かりが、サーカディアンリズム(概日リズム)に合わせて調整されている事例も増えてきた。昼間は白色、夕方は暖色系の明かりに変化するというものだ。時の経過を体感でき、より自然環境に身を置いている状態に近づける。

 次に観葉植物、室内にグリーンを配置することが効果が高いと言われている。ただ、たくさん置けば良い、というものでもない。というのも、環境変化が少ない居室内に配置できるグリーンは制限される。亜熱帯地方に生えている、日本では普段見られない、肉厚の葉の大きな植物となってしまう。日本人にはなじみの薄いそうした植物がオフィス内に多数配置されると、どうしても違和感、圧迫感を感じてしまう。ある外資系の日本法人が、数多く設置してしまい、日本人社員が不調を訴えたという事例もある。

 このためグリーンを配置する際には、緑視率という概念を用いて調整する。目の前に見える緑色の割合で、その最適解は10〜15%とされる。とにかく置けば良いというものではないのだ。

 また近頃は、木目調の什器を目にすることがある。木目調も含めた木を置くに当たっても、木視率という概念がある。30〜40%でリラックス、45〜50%で気持ちが積極的になると言われているので、これも意識して配置したい。

photo (提供:ゲッティイメージズ)

 海の見える眺望は都心ではなかなか難しいが、地方であれば検討の余地はあるかもしれない。淡路島に移転したパソナホールディングスのオフィスを何度か取材したが、窓の下がそのまま海というオフィスもあった。そこにはハイカウンターのソロワークスペースを設置していて、社員のお気に入りのスペースとなっていた。

 その他、自然音をオフィス内に流す企業も多い。足元からは小川のせせらぎ、上からは鳥のさえずりが聞こえてくる。その会社の発祥の地の森の音を流している事例もある。香りをたく会社もあるが、個人の好みが分かれる分野であるため、反応を観察して導入する必要があるだろう。

 自然そのものではないが、通常より暗くした空間に、人工的に焚火を模したスペースを作っている企業もある。キャンプファイアのようなそのスペースで1on1を行うと、本音が出やすいとのことだ。

 ユニークな事例としては、受付に池を配置した企業もある。上から水滴が定期的に落ちて、水面に波紋ができる。訪問した人は、しばしその波紋に見とれてしまう。公園のような効果を狙っている。

 ロバートソン・クーパー社が発行した「ヒューマンスペース・グローバル・レポート」によれば、オフィスにバイオフィリックデザインを取り入れると、幸福度が15%、生産性が6%、創造性が15%向上する。多くの企業が取り組んでいる、生産性を高めるためのDXに匹敵するような効果を期待できるのだ。オフィス環境の改善に、バイオフィリアの考え方を活用してみてほしい。

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