長引くコロナ禍の影響は、人々の生活様式を変貌させた。それはビジネスパーソンの働き方もしかり。「働く場所=会社のオフィス」が当たり前だった世界は消え、テレワークが浸透した現代では、オフィスだけでなく自宅、コワーキングスペース、シェアオフィス、カフェに至るまで“働く場”は多様化している。
この連載では、“働く場”の再定義が余儀なくされた現代において会社がどう対応するべきか。先進的な取り組みを行う企業を紹介していく。
パナソニックは、家電事業に関わる部門・関連会社が集結した「パナソニック目黒ビル」(東京都目黒区)を10月にオープンした。テレワークで顕在化したコミュニケーション不足の解決とパナソニックらしさを意識した職場環境を目指したという。若手社員が中心となって取り組んだというパナの新オフィスを取材した。
パナソニック目黒ビルは、JR五反田駅から徒歩6分、目黒駅から9分の位置にある。2006年に竣工した地上25階、地下2階のビルで、延べ床面積は4万7843平方メートル。
現在、パナの家電事業を担当するくらしアプライアンス社を中心に、事業会社、流通部門など述べ2300人の従業員が働いている。開発・製造・販売の一体経営を実現する家電事業のメイン拠点にする考えだ。くらしアプライアンス社常務の塔之岡康雄氏は「今後も他拠点からのシフト、新規採用を継続し、最終的には入居人数を2700人まで拡大する」と話す。
天王洲アイルに本社機能を有していたパナソニックくらしアライアンス社は、入居していたビルが23年2月に賃貸満了を迎えるため、転居先を探していた。今回のビルには大日本印刷(DNP)が入居していたが、3月に退去したことを機に移転先に決めたという。
新拠点の創出にあたり重要視したのは「コミュニケーションの活性化とパナソニックらしさがあふれる職場環境」だ。
塔之岡氏は「コロナ禍によりリモートワークが進んだ結果、コミュニケーション不足を実感し、対面の価値を再認識できました。そこで、今回のオフィス設計では、コミュニケーションの活性化を促進する場を意識し、従業員はもちろん、お客さまもパナソニックらしさを体感できるような空間を目指しました」と話す。
今回のプロジェクトは、若手社員13人が中心になって推進。「自然と行きたくなるオフィスであること」と「パナソニックらしさ」を重点にオフィス設計を行ったという。
まず注目すべきは、7階にある「しばWORK」だ。広大な執務スペースから少し離れた窓側の場所にあり、なんと空間一面が人工芝に囲まれている。リラックスして仕事に取り組むことができるように、アウトドアで使用するようなオフィス家具も設置した。コミュニケーションを促進する場としても期待しているという。ルームランナーも設置しており、運動不足解消や気分転換にも一役買いそうだ。
22階には、出張者向けにTsudou-baというフロアを用意した。出張者がソロワークをしたり、待ち合わせの場所として利用したりできる。また、家電事業の拠点ということで、普段は工場に勤務する従業員が多く訪れることも想定した。
「普段ものづくりを行っている方は、どうしても目の前のことに意識が向きがちです。大きな窓から街の景色を見ることで、物事を俯瞰(ふかん)で見たり、リセットしたりしてもらいたいと考えて、最上階にこの空間を作ることにしました」(若手プロジェクトメンバー)
コミュニケーションの場づくりとしては、10階にはTsumugu-baがある。このスペースでは、気軽な雑談や相談など、部署を超えたメンバーとの活発なコミュニケーションが行える。対面して会話できる長机や、リラックスできる1人用のソファ席も設けた。
開放的な空間にするため、電源コードや配線などの煩わしいケーブル類を極力排除した。可搬型バッテリー「e-block」を設置しており、電源を使いたい時は、自身で運んで使用する。「e-block」は他のフロアにも設置してあり、ビル全体で76台用意してある。
8階にある社員食堂「ビストロMEGRO」では、従業員の健康を考えたヘルシーメニューを多数用意している。1人席、2人席、通常の食事スペースだけでなく、ファミリーレストランのようなボックス席も作った。喫食だけでなくメンバー間のミーティングや語らいの場としての活用にも期待しているという。
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