毎月5億件に上る攻撃、Visaはどう対応? サイバーセキュリティに「数十億ドル」を費やすワケPayments Dive

» 2024年05月14日 08時00分 公開
[Lynne MarekPayments Dive]
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 米クレジットカード大手Visaのマクイナーニ氏は、2024年3月4日の週の投資家会議で次のように述べた。

 「Visaはサイバーセキュリティに数十億ドルを投資しており、これは自社の決済システムを守るためでもあり、顧客向けのサービスを開発するためでもある」

毎月5億件に上る攻撃 Visaはどう対応?

 また、マクイナーニ氏は、2024年3月5日のRBC Capital Marketsの会議では(注1)、次のように述べている。

 「サイバーセキュリティは地球上のどの企業にとっても非常に重要なテーマである。特に金融サービス企業における重要性は高い。世界中の銀行のプラットフォームとして、私たちは大規模な攻撃対象となっている」

 マクイナーニ氏によると、一般的なフィッシングメールから、国家を後ろ盾にした巧妙なサイバー攻撃まで、Visaは毎月5億件に上る攻撃を防いでいるという。

 サンフランシスコを拠点とするVisaは、システムの防御に数十億ドルを費やしており、今後さらに数十億ドルを費やすことになるようだ。マクイナーニ氏は「全世界で働く3万人の従業員のうちサイバー領域の専門家は約1000人だ」と語った。

 「私たちは皆、このエコシステムとネットワークを守るために戦っている」(マクイナーニ氏)

 マクイナーニ氏は、Visaが毎月約2000万通の悪質な電子メールを、従業員に届く前にブロックしていることを強調した。

 マクイナーニ氏は「私たちはこれまでにサイバーセキュリティのために数十億ドルを費やしており、今後も数十億ドルを費やして、顧客とエコシステムのために構築したネットワークを保護する」と述べた。さらに「Visaは、サイバー領域のノウハウを製品化し、顧客に追加のネットワークサービスとコンサルティングサービスを提供する」と付け加えた。

 Visaは、サイバーセキュリティに毎年どれだけの金額を費やしているかについて具体的なコメントを求められたが、すぐに回答しなかった。

Visaによる生成AIの活用

 「Visaは顧客との対話の中で、世界のさまざまな地域におけるサイバー脅威を理解してきた。今は、これを他の地域の顧客との対話に反映させようと努めている。例えば、カナダの顧客が東南アジアの出来事を知ることができるよう支援する」(マクイナーニ氏)

 マクイナーニ氏は、次のように説明している。

 「市場ごとに分けられたチームが互いに学び、パターンを認識できるように多くの時間を割いている」

 Visaのサイバーセキュリティ支出に関する見解は、加盟店が支払わなければならないカードネットワーク手数料の引き下げを目指す政府機関と業界が争っている最中に発表された。Visaをはじめとする業界団体は、これらの取引手数料や関連手数料は、サイバーアタックや詐欺の脅威を抑止するための資金であると主張している。

(写真はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 政府の取り組みには、2023年に連邦準備制度理事会(FRB)が提案した(注2)、カードネットワークが加盟店に請求できるデビットカード取引処理手数料の引き下げが含まれる。また、クレジット取引の処理にさらなる競争を導入することで、このような手数料の引き下げを目指すCredit Card Competition Actの可決に向けた取り組みも含まれる(注3)。

 サイバーセキュリティに関して、マクイナーニ氏は、Visaが、自社のサービスを通じて口座間不正行為を阻止するために生成AIをどのように活用しているかについても語った。

 「生成AIの原動力はデータである。Visaは、世界最大の決済データセットを保有している」(マクイナーニ氏)

 Visaは、世界中から収集したデータを使って独自の大規模言語モデルを作成し、人間の反応をシミュレートするための基礎として使用できる機械学習エンジンを開発している。このAI領域からのアプローチは、リアルタイム決済であれACH決済であれ、口座間の銀行決済における不正や詐欺と戦うために使われている。

 Visaは、異なる決済エコシステムに適用可能な新しい詐欺対策ツール、詐欺被害軽減サービス、評価アルゴリズムの開発を可能にする合成データセットを開発している。マクイナーニ氏は「私たちは、世界中の支払いネットワークや銀行と、リアルタイムに大規模に連携している」と述べた。

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