東海道新幹線の「品川駅折り返し列車」構想は、どうなった?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/5 ページ)

» 2024年05月24日 06時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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品川駅折り返しは「非常事態用」に

 では品川駅の折り返し設備や留置線は不要かというと、実は役割が残っている。それは「東京駅や車庫分岐点に支障があったときの拠点」だ。もし東京駅で分岐器が故障したら、あるいはのりばの1つで車両が立ち往生したら。それは車両故障だけにとどまらない。乗客トラブルの恐れもある。

品川駅の未来はどうなる?(画像:ゲッティイメージズより)

 記憶に新しいところでは、2014年1月3日の有楽町駅沿線火災だ。日本経済新聞2014年1月15日「正月の有楽町火災があぶり出した都市防災の『盲点』」によると、午前6時頃、新幹線の線路脇のビルから出火し、パチンコ店、ゲームセンターなど3棟が焼けた。建物の一部は木造3階建てだったという。消火完了は15時31分。けが人はなかった。

 東海道新幹線は火災発生直後から東京〜品川間で運行できなかった。上下106本が運休、238本が遅れ、最大遅れ時間は5時間28分だった。こんなときこそ品川が活躍するはずだったけれども、臨時列車は27本だけだった。乗務員の手配などに時間がかかったという。列車だけなら、上りプラットホームに乗客を降ろし、いったん3本の留置線に引き上げさせて、下りプラットホームから乗せればいいけれど、単純に折り返させれば良いというものではないらしい。

 しかし、JR東海は東海道新幹線で、地震や雪害、豪雨などを想定して二重三重の備えをしている。あの火災を教訓に、今後はもっと適切な復旧運転ができるよう訓練しているだろう。そうでなければ、JR東日本に頭を下げてまでつくった品川駅がもったいない。

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてパソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICETHREETREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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