認証制度は、まさしくこれだ。このブルシット・ジョブはかつて、日本の自動車マーケットの守り神だった。煩雑で時間のかかる手続きが、ポッと出のベンチャーや海外メーカーの参入障壁となって機能していたおかげで、トヨタもホンダも自国マーケットを脅かされることなく、安心して技術を磨くことができた。
しかし、それから時代は流れ、日本の自動車メーカーは世界で勝負をするようになり、各国での厳しい規制をクリアするため、メーカー独自の試験で、独自の安全・環境基準を目指すようになった。認証制度は国内市場への参入障壁というプラス要素が薄まって、メーカー各社の競争力向上の足を引っ張るというマイナス要素だけが「悪目立ち」するようになってしまったのである。
とはいえ、今も参入障壁としての恩恵がないわけではないので、自動車業界としてもこれをスパッとやめることもできない。そんな問題先送りをしている間に、現場の負担がどんどん増えていく。そして、その「むちゃ」のつじつまを合わせるように、現場でこっそりと「不正」が始まっていくというわけだ。
このような「ブルシット・ジョブ型不祥事」はこれから日本で増えていくだろう。分かりやすいのはマスコミである。
この業界もベンチャーや外資系企業の参入はハードルが高い。限られた企業の記者だけしか政府や役所の記者会見に出られないなど「記者クラブ制度」という参入障壁があるからだ。この産業保護策のおかげで、日本のマスコミ企業は他の先進国ではあり得ないほどの巨大企業に成長できた。
しかし、ご存じのようにネットやSNSの発達によって、自由な取材言論活動が盛んになったことで、記者クラブの中で取材することは典型的なブルシット・ジョブになった。記者会見はすぐにネットやSNSで中継されるし、特ダネは“文春”や“新潮”などにリークされる。なまじ記者クラブに加盟しているので、役所側の機嫌を損ねることができず「自主規制」が多くなる。当然、そんな偏向ニュースにイラつく人々からは“マスゴミ”などとなじられてしまう。
衰退するシャープは「日本そのもの」か “世界の亀山モデル”が失敗パターンにハマった理由
なぜ人は「激安タイヤ」を買うのか アジアンタイヤの存在感が高まるリスク
なぜ「プリウス」が標的にされるのか 不名誉な呼び名が浸透している背景
なぜヘッドライトがまぶしく感じるクルマが増えているのかCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング