なぜ「自動車不正」問題は起きたのか “どうでもいい仕事”があふれる残念な現実スピン経済の歩き方(6/6 ページ)

» 2024年06月12日 09時07分 公開
[窪田順生ITmedia]
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日本企業にあふれるブルシット・ジョブ

 つまり、かつて新規参入の障壁だった記者クラブは今や、「完璧に無意味で、不必要で、有害でさえあるムダな仕事」に成り下がってしまっているのだ。

 当然、現場の記者はこんなブルシット・ジョブはやりたくない。しかし、認証制度と同じで、まだ既得権益を守ってくれている側面もあるのでなかなかスパっとやめられない。結局、疲弊して不正に走っていく。少し前、小林製薬の紅麹問題で、読売新聞のデスクが取材したコメントを勝手に捏造(ねつぞう)してクビになったが、これもブルシット・ジョブ型不正だろう。

ブルシット・ジョブ型不正がまん延(画像はイメージ、出典:ゲッティイメージズ)

 ムダな会議、ムダな手続き、意味のない打ち合わせ、日本のビジネスシーンに、ブルシット・ジョブがあふれていることに異論を挟む人はいないだろう。ただ、それは裏を返せば、「ブルシット・ジョブの恩恵を授かってきた人々」がビジネスの世界にはたくさん存在しているということだ。

 そういう既得権益者たちは文句やグチを言いながら結局、ブルシット・ジョブを止められない。ああでもない、こうでもないと「変革ができない理由」を並べて問題を先送りする。そこで1番のしわ寄せを受けるのが「現場」で働く弱い立場の人間だ。認証不正のように、現場の実態とかけ離れたブルシット・ジョブを会社から命じられて、納期や成果を求められるうちに心身を追い詰められてしまう。どう考えても達成できないスケジュール、何をやってもクリアできない目標を前に「こんなもんやってられるかよ」と心がポキンと折れる。

 しかし、組織人として「できません」は口が裂けても言えない。住宅ローンも残っているし、子どもの教育費もあるので辞表を出すわけにもいかない。そうなると、あとに残された道は、データの改ざんなどの不正しかないのではないか。

 日本を代表する自動車産業で起きたことは、他業界でも起きる。ビジネスパーソンの皆さんはぜひとも「ブルシット・ジョブ型不正」に巻き込まれないようお気を付けいただきたい。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受


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