日本の自動車メーカーが、自分たちで厳格な安全・環境負荷の審査をしている点だけに注目をすれば、認証制度は間違いなく「完璧に無意味で、不必要で、有害でさえあるブルシット・ジョブ」である。が、ちょっと視点を変えると、自動車メーカーの利益を守ってくれる「産業保護システム」という側面もある。
なぜかというと、ベンチャー企業が自動車ビジネスに新規参入してくることを阻んでくれているからだ。
今回、大手自動車メーカーがそろいにそろって不正に走ったのは、この認証制度が現場に大きな負担となっていたからだ。先ほども申し上げたように、自動車メーカーは独自に厳しい基準で試験を行っており、より高い性能を求めて何度もやり直しを行う。
ハードな試験に明け暮れて疲弊している現場の人々が、自社のやり方と異なる試験も行って、自社とは異なる基準もクリアしてくれと命じられたらどうか。「チッ、余計な仕事を増やしやがって」とイラッとするのではないか。中には「こんなもんテキトーでいいだろ」と手を抜く人もいるのではないか。
このように大企業でさえ敬遠する「ムダな仕事」を、人もカネも余裕がない小さな会社がこなすのは不可能だ。もし画期的な技術を持つ自動車ベンチャーであっても、国から「大量生産」のお墨付きをもらえなければスタートラインにも立てない。
つまり、認証制度というブルシット・ジョブは、ポッと出の新規プレーヤーが自動車マーケットにズカズカと入ってこれないような、「参入障壁」となっている側面もあるのだ。
実はこれは自動車産業だけではない。このような「行政手続きの煩雑さ」というブルシット・ジョブによって、日本政府は新規参入を制限してきたのだ。
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