今でこそ順風満帆に見えるが、YEBISU BEER TOWNの運営はさまざまな試行錯誤を重ねてきた結果、今がある。萬谷氏は「最初の1年は目の前の数字を意識しすぎていた」と振り返る。
開始から1年程度は住民の活動データ細かく分析。しかし、データから得られる気付きよりも、住民の日々の投稿や実行委員のメンバーとのやりとりで得られるリアルタイムな気付きのほうが、ブランドを運営するうえでとても重要だと考えた。
「データを見るよりも、目の前のファンやユーザーを見た方がいいという結論に至った」
データ分析よりも、日々得られる気付きをタイムリーにコミュニティー企画やサービス改善に生かすことが重要だと実感した。この頃の気付きが今に生かされ、コミュニティー内のアクティブ率を高く保つことにつながっているという。
コミュニティー施策は、時間が経過すると参加当初の熱量が下がり、離脱が増加してしまうというのはよくある話だ。萬谷氏ら運営は、離脱や休眠者が増えないように「サイトに訪れるとおみくじが引ける」「投稿するとグッズがもらえる」など定期的にイベントを投げかけている。おみくじの演出やグッズの内容も、住民の声を参考にして実施した。
最後に、萬谷氏は今後の展望について「今後はリアル体験とデジタル体験を融合させていくことが重要」だと話した。「全国のファンとオフ会」「ヱビスの店とファンをつなぐ」といったリアルの体験と、YEBISU BEER TOWNによるデジタルなコミュニティー体験。両面でユーザーの“ファン度”を高め、融合させていくことが重要になる。
2024年4月に開業したブランド体験拠点「YEBISU BREWERY TOKYO」では、ヱビスを味わうだけでなく、ビールのルーツを楽しむミュージアムをはじめ、ここでしかできない体験を提供しリアル体験の充実をはかる。
萬谷氏は「まずは15万人が1つの節目」と目標数値を言葉にするが、「数よりも、これまで作り上げてきた関係性を守りつつ成長していくことが大事」だと強調した。
若い世代を中心にビール離れが進んでいる今、大手ビール会社はさまざまな打ち手を講じている。そんな中、熱量の高いファンを核としつつ、新規ファンの獲得にも注力するYEBISU BEER TOWNの取り組みが、今後どのような影響を及ぼすのか注目したい。
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