生成AIでデジタル戦略はこう変わる AI研究者が語る「一歩先の未来」
【開催期間】2024年7月9日(火)〜7月28日(日)
【視聴】無料
【視聴方法】こちらより事前登録
【概要】元・東京大学松尾研究室、今井翔太氏が登壇。
生成AIは人類史上最大級の技術革命である。ただし現状、生成AI技術のあまりの発展の速さは、むしろ企業での活用を妨げている感すらある。AI研究者の視点から語る、生成AI×デジタル戦略の未来とは――。
合理的で効率化が求められる社会。どんどん便利になる社会。何不自由なく生きられる社会。しかし、それと逆行するように人々の幸福度は下がっている。
もっと豊かで人間らしい暮らしを得るには、時間的な余白や、一見どうでもいいような機能、生活必需品ではないものの購入など、いうなれば「無駄」が必要なのである。無駄こそ心にゆとりをもたらし、無駄こそ周囲へのやさしさにつながる。真の豊かさを求める上での最強の武器である「無駄」について、社会を解剖していく。
世の中が加速度的に便利になる中で、効率は良くなったものの面白さが失われてしまった……。だからこそ、今の時代には「無駄」が必要なのである!
そんな考えのもと鼻息荒く始まった本コラム。連載第5回のテーマとしてとりあげるのは、「かわいい! キャラクターコンテンツ」です。
日本で、そして世界中で愛される、かわいいキャラクター。近年は大人でも「思わずハマってしまった」「推しキャラがいる」という人は珍しくありません。実際キャラクターグッズやカフェには多くのファンがお金を使っていますし、人気キャラクターコンテンツとのコラボで爆売れしたなんてプロモーション例も少なくありません。
しかしなじみがない方は「大人なのに、かわいいキャラクター?」「なんであんなに夢中になるの?」「無駄じゃない?」――そんな風に思ってしまうこともあるのではないでしょうか。
一見すると無駄。しかし多くの生活者をひきつけている。ならばそこには学ぶべき点があるはず! ということで、今回はかわいいキャラクター業界をけん引する企業、サンリオでプロデューサーを務める池内慎一朗さんに、消費者を夢中にさせる、その裏側にある仕掛けについてお聞きしました。
サンリオ 事業戦略本部IP創造部ゼネラルマネージャー
2008年にサンリオへ入社。
入社後は出版部門に配属となり、営業と編集を経験。その後ライセンス部門にて、雑貨やデジタルの営業担当に。
2022年にIP創造部へ異動、プロデューサー担当へ。
趣味は釣り。
筆者: キャラクターコンテンツの仕掛けというと、例えば一般に、思わずかわいいと思ってしまうキャラクターにある特徴として、ベビースキーマ的デザイン(※1)や、かわいそうと思わせる演出などが語られています。とはいえ、そういった特徴を踏まえていたとしても人気がでるのは一握り。特に現代は多くのキャラクターが割拠しているようにも思います。
プロデューサーとして、この現代に意識されていることはあるのでしょうか。
※1:乳児や幼い動物の持つ身体的特徴のこと。
池内氏: 挙げていただいた点も一部含むかもしれませんが、今の世にいる人たちの「共感のポイントをいかに深掘れるか」というのは大事だと思いますね。共感しやすい状況、今風に言うなら、推しやすい状況づくりは意識しています。
近年に取り組んだ新しい挑戦としては、NEXT KAWAII PROJECT。新しくデビューするキャラクターをみなさんと一緒に決めていったこのプロジェクトは、成長の過程や舞台裏を見せることでファンを集めていくアーティストのオーディション番組から着想を得て企画しました。この形式の良いところは、注目をされることももちろんですが、ストーリー性が出てファンの方が一緒になって応援したくなるということですね。それに、一種の共創とも言えるUGC(※2)も生まれて、熱が広がっていくという点もありますね。
※2:User Generated Content(一般ユーザーが生成したコンテンツ)
筆者: これまでのかわいいキャラクターの制作や発信とは異なる分野から、今の時代ならではの共感のつくり方を見つけたんですね。これはまさに令和ならではの推しやすい状態をつくっている施策ですね。
池内氏: このプロジェクトに限らず、いわゆるサンリオらしいものとは違う、これまでとは異なる視点で試行錯誤している施策は多いです。
「なぜこれがいま反応も良く好まれているんだろう?」ということを言語化していけば、絶対ヒントが出てくると思っていて。「お客さんはこう思っているからこそ、サンリオのキャラクターたちにもこういうことをさせてみよう!」といった、新しい施策を生むことにつながっていますね。
ほかには、コラボ戦略。今は「推しの推しは推し」となる人も多いですよね。いろいろな「好き」のクラスターがありますから、ファンを広げるのに、どうしたら足し算ではなく掛け算となるコラボができるか? は、よく考える必要があるのかなと。その点、サンリオのキャラクターたちは考えやすいと思いますね。
筆者: 考えやすい、というのは?
池内氏: サンリオのキャラクターたちは、何にでもなれるというと言いすぎかもしれないですが、それぞれ変えてはならない大事なコアは持ちつつも、余白があるというか。デザイン的にも柔軟で、さまざまなコラボ先の世界観に入ることや、媒体に対応することができると思っています。
筆者: なるほど。「余白」というのは、この記事のテーマ「必要な無駄」と言えるかもしれないですね。
ちょっとお話は変わりますが、昨今キャラクターカフェがすごく人気で、お金を惜しみなく使う人も多いように感じます。あのような場をつくりつくりだすにあたって意識していることはありますか。
池内氏: ここもいかに共感ポイントを押さえるか、ということに通ずるのですが、世界観に浸りたいと考える人の共感や満足してもらえるものを、いかにしてつくれるか。世界観をカフェという空間にクオリティー高く再現するというのは大事にしています。うまく表現することで、その空間に浸るというか、もはやファン同士が語り合ってくれていたりもしますね。
筆者: なるほど。カフェに限らずこうした推し活ニーズを満たすような機会というのは、定期的に提供するよう施策を組んでいるものなのでしょうか。
池内氏: キャラクターにもよるのですが、基本的にはそうですね。オンライン施策の取り組みももちろんたくさんあるのですが、キャラクターたちに会えるリアルのイベントは中でも特に大事にしています。それは時代が変わっても変わらないところですね。キャラクターに共感してくれているファンを目にすることができる機会でもあります。
そういった共感してくれる、喜んでくれるファンの方々をリアルの場で見て大切にするというのは、サンリオの原体験でもありますから。そこはこれからもずっと変わらないんじゃないかなと思いますね。
筆者: デジタルメディアを含めキャラクターとの関わり方がたくさん増えた現代でも、「リアルの場」を大事にされていると。これもうっかりすると近年軽視してしまう「必要な無駄」かもしれませんね。
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