銀行の「手数料引き下げ合戦」は起こる? 三井住友銀は最大“約30%減”、背景には何が古田拓也「今さら聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)

» 2024年07月12日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

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 三井住友銀行は7月10日、SMBCダイレクトの他行振込手数料を10月から最大約30%引き下げると発表した。

 これにより3万円以上の他行振込手数料は、現行の330円から220円となる。3万円未満の場合は165円から154円と、値下げ率は相対的に小さいものの、他ネット銀行に近い水準まで振り込み手数料が低下することになる。

photo 手数料引き下げの詳細(同社プレスリリースより)

 ちなみに同行は、ここ数年で段階的に振込手数料を引き下げており、最近では2021年11月にも他行振込手数料を値下げしている。当時は3万円以上の他行振込手数料は440円と、今回の新料金の2倍で設定していた。

 全銀ネットの銀行間手数料廃止や長期金利の高騰を背景に、銀行ビジネスは手数料収入への依存から脱却する動きをみせつつある。今後“手数料の引き下げ合戦”は起こるのか。

「利ザヤ」ビジネスに復権の兆し

 黒田日銀前総裁による異次元の金融緩和政策が、植田新総裁のもとで「正常化」する過程で長期金利が高騰している。一般に、金利の高騰は住宅ローンやカーローンといったいわゆる“借金”の負担が大きくなる一方で、国債や銀行預金といった安定資産の利回りが大きくなるメリットもある。

 日本の金利は長期間にわたり超低金利状態が続いていたが、最近では金利上昇の期待感が高まっている。銀行は金利差(利ザヤ)を活用したビジネスモデルへの転換を図りつつある。通常、単に金利だけ上がっても貸し先の需要がなければ銀行側も振込手数料を安くしてまで預金を集める必要がない。

 なぜなら、貸し先がないにもかかわらず預金だけ増えていけば、預金者に支払う利息の分だけ銀行が損してしまうからだ。金利上昇局面と資金需要という2つの要因がセットにならなければ、銀行のサービスや利息が預金者に有利にはならないのである。

 この点について、国内の幅広い地域で半導体産業やデータセンターへの巨額投資が相次いでいる点が見逃せない。また、空前の円安による輸出産業の資金需要も旺盛だ。こうした背景から、三井住友銀行は振込手数料収入よりも融資業務や投資活動から得られる金利収入にシフトする方針を固めたと考えられる。

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